高校生が傷害・暴力行為で退学になる?16〜18歳の傷害事件と処分
少年事件

法政大学法学部卒業
学習院大学法科大学院修了
アトム法律事務所
アトム市川船橋法律事務所
令和5年1月 西船橋ゴール法律事務所開業
所属:千葉県弁護士会
高校生の多くは、16歳〜18歳です。この年齢になると、同級生同士のいさかいや、街中での同世代グループの衝突で、暴力行為、傷害行為に及んでしまう場合があります。
大人であれば、当然、刑事事件として扱われますが、16歳から18歳の場合、大人と同様の扱いを受けることにはなりません。20歳未満の者に少年法が適用されることは、ご存知の方が多いでしょう。
ただ、実際に、少年法による手続が大人の刑事手続とどのように異なるのかを理解されている保護者の方は少ないです。
この記事では、高校生が暴力事件・傷害事件を起こした場合に、どのような手続を通してどのような処分を受けるか、また学校を退学処分となってしまうかどうかなどについて、基礎知識を解説します。
目次
高校生が暴力事件を起こした場合の処分の流れ
20歳以上と高校生との手続の違い
20歳以上の者による暴力事件は、暴行罪や傷害罪として、刑事訴訟法が適用され、刑罰を科すための刑事手続が行われます。
暴力事件を起こした者が、20歳未満の「少年」でも、刑事責任年齢である14歳以上ならば、暴行罪や傷害罪が成立する点は同じです。
しかし、この場合、少年法上の「犯罪少年」として扱われ、原則として少年の健全な育成・保護を目的とする少年法の適用があります。成人の裁判とは異なり、家庭裁判所による少年審判手続が行われます。
高校生が逮捕された場合
高校生が暴力事件で警察官に逮捕された場合、警察官による取り調べを経て、48時間以内に検察庁に身柄が送致されます(刑訴法203条)。
身柄を受け取った検察官は、引き続き捜査の必要などがあれば、送致から24時間かつ逮捕から72時間以内に裁判所に勾留を請求します。裁判官が勾留を認めると、最長20日間にわたって身体拘束を受けます。
検察官は、その勾留期間内にさらに捜査を行い、犯罪の嫌疑があると判断すれば、家裁(家庭裁判所)に身柄を送致します。
送致を受けた家裁では、少年を鑑別所に収容して観察調査を実施する監護措置を行うか否かを決めます。監護措置の期間は通常4週間です。
この4週間の期間内に、家裁調査官などが少年をとりまくあらゆる事情を調査し、これに基づいて、裁判官が審判を開始するか否かを決めます。
審判を行う場合は、通常、監護措置の期間中に審判が開かれます。
在宅事件となった場合
逮捕・勾留されなかった場合でも、在宅事件として、警察、検察による捜査は継続され、犯罪の嫌疑があれば、検察から家裁に事件が送致されます。
在宅事件の場合、通常は、監護措置は行われず、通常の生活を継続しながら、家裁調査官の呼び出しに応じて、少年や保護者が調査を受けることになります。
調査結果に基づき、審判の開始・不開始の決定が行われます。
→「在宅捜査になった少年事件の流れ・期間をわかりやすく解説」
処分の内容
20歳以上の場合(刑罰)
20歳以上の場合、検察官が諸般の事情を考慮し、起訴の必要がないと判断すれば、不起訴処分とできる起訴猶予が認められています(刑訴法248条)。
起訴猶予とならず、起訴され有罪判決を受ける場合の法定刑は次のとおりです。
暴力事件の法定刑
暴行罪:2年以下の拘禁刑、30万円以下の罰金刑、拘留、科料(刑法208条)
傷害罪:15年以下の拘禁刑、50万円以下の罰金刑(同204条)
傷害致死罪:3年以上の有期拘禁刑(同205条)
14歳以上20歳未満の場合(保護処分)
20歳未満の犯罪少年には、起訴猶予の制度はなく、事件は原則として検察官から家裁へ送致されますが、家裁の審判手続では、20歳以上のような刑罰は受けず、健全な育成を目的とした保護処分を受けることになります。
主要な保護処分は次のとおりです。
| 保護処分 | 保護観察 | ①少年を施設に収容せず、社会内で通常の生活を継続し、保護司や保護観察官の監督・指導を受けながら更生を図る処分。 ②期間は20歳に達するまで。その期間が2年間に満たない場合2年間が原則。 |
| 少年院送致 | ①少年院において矯正教育を受けさせる処分。 ②原則20歳に達するまでの期間内で、事案に応じ、2年以内〜3ヶ月以内となることが多い。 |
なお、18歳以上の「特定少年」については、保護観察・少年院送致のいずれについても特例があります。
また、犯罪事実が存在しないと認められた場合や、保護処分が不必要と認められた場合には、不処分となり、事件処理は終結します。
ほかに、試験観察という暫定処分もあります。一定期間、社会内での様子をみて、一定期間経過後に改めて処分を下すというものです。
逆送事件
逆送事件とは
「逆送」とは、一定の悪質な事案について、少年に刑事裁判による刑事処分を受けさせるために、家裁から検察官へ事件を逆に送致する場合です。
次の場合、家裁は、事件を検察官に逆送致しなくてはなりません。
逆送となる要件
①拘禁刑以上の刑に当たる罪の事件について、調査の結果、その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるとき。
②故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件で、罪を犯すとき16歳以上の少年であった場合。ただし、調査の結果、犯行の動機及び態様、犯行後の情況、少年の性格、年齢、行状及び環境その他の事情を考慮し、刑事処分以外の措置が相当なときを除く
③特定少年(18歳・19歳の者)の次の事件
(A)調査の結果、その罪質及び情状に照らして刑事処分が相当なとき
(B)故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件で、罪を犯すときに16歳以上の少年の場合。但し、刑事処分以外の措置が相当なときは除く
(C)死刑・無期拘禁刑・短期1年以上の拘禁刑に当たる罪の事件で、罪を犯すとき特定少年だった場合。但し、刑事処分以外の措置が相当なときは除く
暴行罪、傷害罪は「拘禁刑以上の刑に当たる罪」に含まれ、傷害致死罪は「故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪」にも含まれますから、高校生の暴力・傷害事件でも、事案によっては検察官に逆送致され、起訴されて刑事裁判を受ける可能性があります。

弁護士
少年の事件だから、常に保護処分で済むとは限らないのです。
逆送事件の刑罰
逆送され、起訴されて刑事裁判の有罪判決を受ける場合の刑罰については、少年法に特別の定めがあります。
例えば、少年に対し、有期の拘禁刑を科すときは、執行猶予判決の場合を除き、短期と長期を定めた不定期刑を言い渡します。
短期と長期の期間は、短期10年、長期15年を超えることができないなどの一定の条件が定められています。
不定期刑の場合、短期が経過して改善更生が認められれば、刑の執行が終了したとして釈放を受けることができます。
学校の退学処分
退学処分は学校側の裁量
学校教育法は「校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる」と定めています(11条)。
これを受け、学校教育法施行規則は「性行不良で改善の見込がないと認められる者」、「学校の秩序を乱し、その他学生又は生徒としての本分に反した者」を退学処分の対象としています。
したがって、高校生の暴力事件で、退学となるか否かは、これらに該当するか否かによります。
その判断は学校側の裁量であり、裁量にあたっては、事情が総合的に考慮されます。
例えば、①これまでの行状、②暴力事件の犯行内容、③被害の状況、④反省の度合い、⑤示談の成否、⑥他の生徒への影響、⑦審判の内容などです。
私立高校の場合は、その学校の定める校則の内容にもよりますが、基本的な考え方は、変わりません。
西船橋ゴール法律事務所の経験談
・学校に発覚せずに終結できたケースや
・校長や担任教師と親御様、弁護士が協議し、生徒の更生の道筋を示すことができ、処分をされずに済んだとか、必要な停学期間をあけて無事通学できるようになったケース
があります。
退学処分や保護処分を免れるための示談の重要性
高校生の暴力事件で退学処分を免れるために重要なのが、被害者との示談を成立させることです。
示談の成立には、①本人の真摯な反省が示され、②示談金の支払いによる被害の賠償が済まされ、③今後の保護者の監督が期待でき、④重い処罰や処罰自体を求めない被害者の意向が表明されるなど、少年にとって有利な事情となります。
これは、学校側が退学処分などの重い懲戒処分を行うか否かを判断する際に考慮される重要な要素です。
それにとどまらず、そもそも家裁が審判を開始するか否か、少年院送致のような重い保護処分を下すか否か、さらには刑事処分を求めて検察官に逆送するか否かを判断する際にも少年に有利な材料として考慮される事情です。
ただ、暴力事件の場合、被害者側と示談をしたくとも、捜査機関は加害者側に被害者の連絡先を教えてくれません。被害者がクラスメイトの場合のように、連絡先が判明している場合でも、被害者側は恐怖心・嫌悪感などから、加害者の家族など関係者との接触を拒否する例もあります。
弁護士であれば、捜査機関も被害者側の同意を得て、その連絡先を教えてくれますし、被害者側が示談交渉に応じてくれる場合も数多くあります。
高校生の暴力事件で、示談を成功させ、少年審判での重い保護処分や退学処分を回避するためには、できるだけ早い段階から、弁護士を選任して、示談交渉を開始することが大切です。
まとめ
高校生が傷害・暴力事件を起こした際の流れや少年法による処分、学校の退学基準について解説しました。
我が子が事件に関わってしまったとき、保護者が正しい知識を持って迅速かつ冷静に対応することが、子どもの未来を守る第一歩となります。

弁護士
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