高校生の窃盗・万引きは初犯でどうなる?補導・逮捕後の処分を解説
少年事件

平成17年3月 東京都立上野高等学校卒業 平成23年3月 日本大学法学部法律学科卒業 平成26年3月 学習院大学法科大学院修了 平成27年9月 司法試験合格 アトム市川船橋法律事務所 令和5年1月 西船橋ゴール法律事務所開業 所属:千葉県弁護士会
高校生が万引きをしてしまった場合、「初犯だから大丈夫」と考えてしまう方もいます。
しかし、万引きは「窃盗罪」にあたり、少年事件として家庭裁判所での審判を経て処分を受ける可能性があります。
少年事件は、処罰ではなく、少年の更生を重視した制度が採られており、全件家庭裁判所へ送致されるなど20歳以上の者による事件とは異なる手続の流れで処分が決まります。
この記事では、高校生が万引きをした場合の手続きや処分、初犯の場合の扱いについて解説します。
目次
万引きをした高校生の扱い|犯罪少年
高校生の万引きは窃盗罪
万引きは、商品に対する店舗の占有を侵害して、無断で自己の占有に移す「窃取」行為ですから、窃盗罪に該当します(刑法235条)。
そして、刑事責任を負う年齢は14歳以上ですから(刑法41条)、高校生が万引きをすれば「犯罪」としての「窃盗罪」が成立します。
なお、ここでは万引きを例として説明していますが、その他、置き引き・自転車やバイクの窃盗・キャッシュカードなどの抜き取り等も同じく「窃盗罪」です。
少年法が適用される
被疑者が20歳未満の場合は、20歳以上の者に適用される刑事訴訟法上の手続ではなく、少年法上の「犯罪少年」として、少年事件に特有の手続を適用するのが原則です。
刑事訴訟手続は犯人の処罰を目的とし、窃盗罪の法定刑である10年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金刑を科すか否かが判断されます。
しかし、少年法は「少年の健全な育成」を図るべく、少年の性格矯正・環境調整による「保護」を主な目的としています(少年法1条)。
家庭裁判所の審判において少年を取り巻く諸事情を総合的に検討し、刑罰ではなく、少年を更生させ、健全に育成するために、どのような保護処分を選択するか?が検討されるのです。
高校生が万引きで逮捕された場合の流れ
警察での取り調べ・検察官送致
高校生が万引きで警察に逮捕されれば、取り調べを受け、48時間以内に検察官へ送致されることが原則です。
もっとも、少年事件では成人よりも身柄拘束は慎重に行われるため、逮捕されず在宅で捜査が進むケースも少なくありません(犯罪捜査規範208条)。
→「在宅捜査になった少年事件の流れ・期間をわかりやすく解説」
また、逮捕された場合は、捜査の必要など「やむを得ない」理由があれば、検察官が裁判官に勾留を請求し、最大20日間の勾留がなされる場合もあります。
家庭裁判所への送致
検察官が「犯罪の疑いがある」と判断した場合、事件は家裁へ送られます。
20歳以上の者の事件のように、検察官の裁量で起訴を猶予できる制度(刑訴法248条)はなく、原則として家裁に送致されて手続が進行します。
少年鑑別所への収容(監護措置)
事件送致を受けた家裁が必要と判断すれば、少年鑑別所へ収容する「監護措置」を決定します。
身柄を拘束された少年については、身柄受取から24時間以内に監護措置決定をするか、釈放して在宅で手続を進めるか決める必要があります。
鑑別所は、刑務所のような刑罰を与える施設ではありません。
鑑別所の機能
- ✅ 審判開始の必要の有無や、最適な保護処分を判断するための調査・観察
- ✅ 調査・審判に不出頭の恐れがある場合の身柄確保を主たる目的とし
- ✅ 犯罪仲間の誘い・接触から防御する
- ✅ 親の暴力などの劣悪な生活環境からの隔離
などの機能も期待される場所です。なお、鑑別所は、成人の身柄が拘束される留置場と異なり面会室にアクリル板がなく、少年とはアクリル板なしに面会をすることができます。
家庭裁判所による調査
収容期間内に、少年だけでなく、保護者を含む少年をとりまく環境のあらゆる事情が、家裁調査官らによって調査されます。
例えば、次のような事項です。
・少年の精神状態・健康状態
・生育歴
・生活状況
・保護者の状況(経済状況、教育態度など)
・犯行の経緯
・反省の状況
・身柄解放後の引き受け態勢(保護者、学校、勤務先など)
収容期間は2週間で、必要に応じ2週間の延長が原則1回だけ認められ、多くのケースでは延長が認められ収容期間は4週間となります。
少年審判
審判開始決定・不開始決定
調査結果を踏まえ、更生には積極的な対応が必要と判断すれば、家裁は審判の開始を決定します(少年法21条)。
審判への出頭確保のため、収容期間内に審判期日が設定されることが通常です。
他方、犯罪の嫌疑なしと判明した場合や、犯罪が軽微で反省が十分と認められる場合は、審判不開始と決定され事件は終了します(少年法19条1項)。
審判期日
審判は非公開で行われ、裁判官(審判官)や家裁調査官、付添人(弁護士)、保護者、その他の関係者(事案に応じて、少年の雇主や担任教師など)が参加します。原則として検察官は出席しません。
責任を追及する刑事裁判とは異なり、懇切・なごやかに、ときには厳しい叱咤激励も交えて少年の内省を促すよう行われます。成人の刑事裁判とは異なり、裁判官が主に質問するかたちで審判は進行します。いかなる保護処分が相応しいかにつき、質疑応答や意見陳述を行い、調査結果と審判廷でのやりとりに基づき、裁判官が審判の結果を下します。
事実に争いがなければ、通常は、審判期日は1回で、その日に審判が下されます。
少年審判で選ばれる主な処分
審判の結果としては、主に次のような処分があります。
審判で下される処分
・不処分…犯罪事実が存在しない、または保護処分が不必要と判断された場合
・保護観察…保護観察官などの指導を受けつつ、通常の社会生活を送る。期間は20歳に達するまで。ただし、その期間が2年未満のときは2年間が原則。期間内でも、保護観察所が保護観察を継続する必要性がなくなったと認めるときは、保護観察を解除できる。
・少年院送致…少年院で矯正教育を受ける。標準的な期間は、案に応じ、3ヶ月以内、6ヶ月以内、2年以内。
※平成27年5月14日付・法務省矯少訓第2号「矯正教育課程に関する訓令」(第3条、同別表1・2)
・児童福祉施設等への送致
高校生の万引きが初犯で、被害額が少なく、深く反省し、被害弁償も済んでいるような事案では、不処分や保護観察にとどまるケースが多い傾向があります。家庭裁判所へ送致後、少年審判が不開始と決定されることもあります。
補導されたが逮捕されなかった場合はどうなる?
高校生の万引きが在宅事件となる場合
高校生の万引きが発覚しても、必ず逮捕されるとは限りません。初犯で被害額が少なく、逃亡や証拠隠滅のおそれがない場合には、警察署への任意同行や事情聴取にとどまり、保護者へ引き渡されるケースもあります。
これは、一般的には「補導」と表現されることがあります。
※「補導」の厳密な意味は「少年警察活動規則」13条1項に定められています。

弁護士
もっとも、逮捕されなかったからといって事件が終わるわけではありません。在宅事件として捜査は進み、窃盗罪の嫌疑ありと判断されれば、検察官を経て家裁へ送致されます。
簡易送致手続
20歳以上の者については、軽微な事案につき、警察から検察に送致を要しない「微罪処分」という取り扱いがあります。
しかし、少年事件は、微罪処分の対象とされていないので、高校生の窃盗罪は、必ず家裁に送致されることになります。
もっとも、軽微で保護処分の必要がないことが明らかな事案では、「簡易送致」という制度があります。これは警察・検察から、軽微な事案を毎月一括し、まとめて家裁に送致し、家裁の書類審査で特に問題がなければ、審判不開始を決定して事案を終わらせるというものです。
※「簡易送致事件の処理について」平成17年7月13日付・最高裁家二第000730号・家庭裁判所長あて家庭局通達・家庭裁判月報第57巻10号155頁)、田宮裕・広瀬健二編「注釈少年法・第5版」有斐閣・230頁、468頁
初犯と再犯で処分は変わるのか
初犯で審判不開始もあり得る
高校生の万引きが初犯の場合、出来心での犯行であり、被害が僅少で、本人が深く反省し、保護者ともども被害者に謝罪して弁償を済ませたという事案であれば、警察の段階で「簡易送致事件」として家裁に送致されるに留まり、家裁が審判不開始決定で処理する可能性が高くなります。
通常の家裁送致事件でも、調査により、初犯で本人の反省、更生意欲が十分であるなどの事情があれば、やはり家裁が審判不開始とする可能性もあります。
初犯でも審判を受けるケース
初犯か否かは、このように少年の要保護性を判断する要素のひとつであり、保護処分の必要性を否定する方向に傾く事情ではあります。
しかし、たとえ初犯であっても、次のような場合には、審判による保護処分を受ける可能性が高くなります。
・犯行の発覚は初めてだが、過去に万引きを繰り返した事実があり、今回も多くの余罪がある
・仲間と集団で、組織的・計画的に万引きを行い、被害品を転売して利益を得ていた
・本人の真摯な反省がない
・保護者も問題意識が希薄で、監督が期待できない
・被害者との示談、謝罪、被害弁償を放置したまま
前科と前歴の違い
前科は、刑事裁判の有罪判決が確定した経歴です。少年審判の保護処分は有罪判決ではなく、前科にはなりません。
もっとも、捜査機関や家裁には事件の記録が残り、「前歴」と扱われ、将来、再び事件を起こした場合に考慮されます。
万引きで退学になる可能性
高校生が万引きをしたことで学校を退学となるか否かは、基本的には事情を総合的に考慮したうえでの学校の裁量によります。
考慮されるのは、①犯行までの行状、②犯行内容、③被害状況、④反省の度合い、⑤示談の成否、⑥他の生徒への影響、⑦審判の内容などです。
また、私立高校の場合は、その学校の定める校則の内容にもよります。
ただ、万引きが初犯である場合は、退学という最も重い処分となるケースは少なく、訓告や停学処分に留まることが多いでしょう。
※1:学校教育法11条「校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる」
※2:学校教育法施行規則26条3項1号「性行不良で改善の見込がないと認められる者」、同項4号「学校の秩序を乱し、その他学生又は生徒としての本分に反した者」を退学処分の対象としています。
窃盗・万引きで示談が重要な理由
示談とは?
万引きを含む窃盗罪では、被害者と示談交渉を行い、合意した内容を記載した示談書を作成し、これにしたがって示談金(通常は弁償金や買取り金)を支払うことが、少年にとって有利な事情となります。
示談書では、少年および保護者が反省して謝罪する旨を記載し、被害者側が少年を「宥恕」することを記載してもらいます。
「宥恕(ゆうじょ)」とは、寛大な心で許すという意味です。「寛大な処分を望みます」や「処分を望みません」などの記載でも同じです。
示談が成立していれば、少年が真摯に反省していること、保護者が子どもの問題に真剣に向き合っていること、被害が回復されたこと、被害者の処罰感情が無くなっていることが明らかとなります。
示談成立が処分決定に与える影響
早期に示談が成立するならば、警察が簡易送致手続を選択することで、送致を受けた家裁が不開始決定として処理し、審判を受けることなく終了できる可能性が高くなります。
仮に通常の家裁送致となった場合でも、家裁での調査において示談成立は少年の要保護性を低下させる事情となりますから、やはり審判不開始決定の可能性は高まります。
さらに、審判が開始された場合でも、示談成立は、少年院送致のような重い保護処分ではなく、保護観察処分で足りるとする理由のひとつとなります。
また、「被害の回復又は軽減のためにとった行動の状況」が、保護観察の期間中の解除を判断する事情のひとつと定められているように、示談の成立は、保護観察期間中の解除の可能性を高めます(「犯罪をした者及び非行のある少年に対する社会内における処遇に関する規則」82条1項)。
示談不成立でも成立に向けた努力が大切
大手スーパーやチェーン店では、被害弁償や被害品の買取金は受け取るものの、万引犯との示談には応じない方針をとっている企業が多いのも実情です。
しかし、そのような方針の被害者に対しても、謝罪し、示談の申し入れを行い、示談を成立させるべく努力を尽くす行動をおこなったこと自体が、真摯な反省を示す行動として重要です。
被害者側が示談に応じない方針であるからといって、何らの努力もせず、放置するならば、それは少年の処分にあたって不利な事情として考慮されてしまいます。
少年事件における弁護士の役割
家裁送致前は弁護人、家裁送致後は付添人
高校生の犯罪事件に対し、弁護士は、逮捕から家裁送致までは「弁護人」として、身柄を拘束された少年と接見し、事実関係の確認や、取り調べに対する対応方法などの法的アドバイスを行い、家族との連絡役も果たします。
検察官に働きかけて、勾留を阻止するよう活動することもできます。
家裁送致後は、「付添人」として、家裁に対し、監護措置決定をしないよう働きかける活動、審判不開始決定とするよう説得する活動、審判となった場合には不処分や保護観察処分に留めるよう主張する活動などを行います。
少年事件における弁護士の多様な役割
事実関係に争いがない事案では、付添人は裁判官・家裁調査官と面談し、少年の問題性やふさわしい保護処分について議論をするなど、少年の更生、健全な育成に協力する役割を担います。
被害者との示談交渉を担当し、示談を成立させること、保護者や少年の雇主に働きかけて、少年の身柄が開放された場合に円滑に社会復帰できる環境を整える活動も行います。
事実関係に争いがある事案では、真実を主張し、少年の利益を守るために、捜査機関だけでなく、調査官や裁判官とも対立する役割を担う場合もあります。
このように、少年事件でも、弁護士は多様な弁護活動、付添人活動を展開することで、少年の利益を守り、健全な育成を図る保護者として、また不当な審判手続による人権侵害から少年を守る役割を期待されています。

弁護士
高校生の万引き事案では、少年事件に注力し、経験豊富な弁護士に相談されることをおすすめします。
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