夫が痴漢で逮捕!妻の初期対応、費用の目安、仕事・生活の影響など解説
痴漢

平成17年3月 東京都立上野高等学校卒業 平成23年3月 日本大学法学部法律学科卒業 平成26年3月 学習院大学法科大学院修了 平成27年9月 司法試験合格 アトム市川船橋法律事務所 令和5年1月 西船橋ゴール法律事務所開業 所属:千葉県弁護士会
「夫が電車で痴漢をして逮捕された」
警察からそんな連絡を受けた妻は、大きなショックを受けることでしょう。
夫が刑罰を受けたり、仕事を失ったりする事態を避けるために、奥様の側がまず行うべきことは何でしょうか?
目次
痴漢はどのような犯罪か?
迷惑防止条例違反
痴漢は犯罪ですが、「痴漢罪」のような罪名はありません。
たとえば、電車内での痴漢行為は、まず、各都道府県の定める「迷惑防止条例」の違反となります。
東京都では「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」において、公共の乗物内で、人の身体に衣服の上からまたは直接に触れ、著しく羞恥させたり、不安を覚えさせたりすることは禁止されており、違反すると、6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金刑となります。
常習のときは、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金刑です。
不同意わいせつ罪
このような痴漢行為は、同時に「不同意わいせつ罪」にも該当します(刑法176条)。
不同意わいせつ罪は、「被害者が、わいせつな行為に同意しない意思を形成・表明・貫徹するいとまがない状態に乗じて、わいせつな行為をした」場合などに成立する犯罪であり、電車内での痴漢は典型的な例です。
法定刑は6月以上10年以下の拘禁刑です。
痴漢行為は、通常、迷惑防止条例違反として取り扱われますが、わいせつ行為が長時間にわたった場合や下着の中に手を入れた場合など、強い悪質性が認められるケースでは、不同意わいせつ罪が適用される場合もあります。
痴漢で逮捕された場合の身体拘束
痴漢で逮捕されるケース
痴漢が発覚し逮捕されると、警察の留置場に拘束され、取り調べを受けます。そして、48時間以内に検察庁に身柄を送致されます。
検察官は、逮捕後も長く身体拘束をして取り調べる必要があると判断すれば、身柄を受け取ってから24時間以内かつ逮捕から72時間以内に、裁判官に対して、被疑者(ご主人)を勾留する決定を下すよう請求します。
痴漢で勾留されるケース
裁判官が勾留を認めると、検察官の請求から10日間、身柄を拘束され続けます。また、検察官は捜査の必要のために、さらに10日間、勾留の期間延長を裁判官に請求することもできます。
したがって、逮捕から最大23日間は身体拘束が続くことがあります。
この期間内に、検察官は、ご主人を起訴するか否かを判断します。
しかし、実際に痴漢で逮捕・勾留されるのは、同種前科がある場合や否認をしている場合、犯行容態が悪質だった場合などに限るでしょう。そのため、現在では、迷惑防止条例違反となる痴漢については基本的に逮捕された場合でも、勾留決定はされずに、逮捕されてから72時間以内に釈放されるケースが多いように感じます。
他方で、下着の下に手を入れるような不同意わいせつの事例では、検察官は基本的に裁判所に対し勾留請求を行い、裁判所も弁護側の身柄開放へ向けたか活動などがなければ、容易に勾留決定を出してしまう印象を受けます。
勾留後の起訴・不起訴
起訴されれば、刑事裁判にかけられます。
軽微な犯行で被疑者に異議がない場合は、簡易裁判所における書類上の手続だけで罰金刑を受ける「略式手続」で済む場合もありますが、そうでなければ、公開の法廷での正式裁判を受けることになります。
いずれの場合であっても、有罪判決を受ければ前科となってしまいます。
他方、検察官は、犯人の性格・年齢・境遇、犯罪の軽重・情状、犯罪後の情況など諸般の事情を考慮して、起訴をしない不起訴処分とすることもできます。不起訴処分となれば、前科とはなりません。
なお、不起訴処分とするか否かについて考慮される事情として、被害者との示談が成立しているか否かは、とても重視されます。示談成立は、ご主人の真摯な反省を表すと同時に、示談金で被害の賠償がなされ、被害者の処罰感情も薄まったことを示しているからです。
身体拘束中の面会
勾留後のみ家族は面会できる
実は、逮捕中はご家族でも面会はできません。逮捕中に面会できるのは弁護士だけです。弁護士は、逮捕直後から、取り調べ中においても、面会をすることができるのですが、ご家族の方は、取り調べ中などであることを理由に、面会することが許されないのです。
他方、勾留中は、ご家族が面会することは可能です。
勾留中でも、証拠隠滅の危険などの理由から、検察官が裁判官に面会禁止を請求することがあります。ただ、単純な痴漢事件であれば、通常、面会禁止にはなりません。
家族の面会にも多くの制限がある
もっとも、家族の面会は、警官の立ち会う面会室で行われ、事件内容について詳しく話すことなどは制止されてしまう場合もあります。
また、その警察署によって取り扱いが異なりますが、面会できるのは通常平日の昼間、時間は10分〜15分程度、人数も1〜3人に制限され、一日一回しか面会は認められません。
このように制限だらけですから、十分な会話は困難です。

弁護士
しかし、弁護士ならば、土日祝日、夜間でも、時間制限や警察官の立ち会いもなく面会をすることができます。
痴漢で逮捕された場合の仕事や家庭への影響
仕事への影響
逮捕後に勾留までされた場合、身体拘束は最大23日間続くので、仕事は当然ながら欠勤となってしまいます。無断欠勤が継続すれば、会社を解雇される事実上の危険があります。
しかし、「痴漢で逮捕されました」と正直に報告すると、企業の信用を失墜させる行為として、懲戒処分を受けてしまう危険もあります。
勤務先には、とりあえずは「家庭の事情」などの理由を伝えておき、できるだけ早い釈放を目指すことが現実的です。
この点については、別記事「夫が逮捕された!会社にバレるの?会社への対応はどうする?解雇を回避し早く職場復帰するためには?」で詳しく紹介していますので、ご参考にして下さい。
家庭への影響
勾留となった後は、短時間であれ家族の面会が許されます。
しかし、勤務先への連絡、家庭の経済的なやりくり、心配している子どもへの説明など、ご主人と相談したい事柄が山ほどあっても、満足な会話はできないのが現実です。
このような家庭への影響は避けられないと考えるべきでしょう。
初期対応として、早急に弁護士に依頼する必要性
本人との十分な意思疎通を確保する
ご主人と面会して、事件の事実を確認したり、今後のことを相談したりする時間は限られており、ご家族だけでは対処が困難です。
弁護士であれば、逮捕段階から直ちにご主人と面会して、十分に事実関係を確認し、それをご家族に報告できます。
また、弁護士がご主人とご家族の間の連絡役となり、勤務先への説明や家庭問題の相談などを円滑に行うことも可能となります。最も多いのは、業務の引継ぎ等に関する連絡となります。会社のある顧客と連絡をしていたのがご主人だけですと、他の方への引継ぎが必要不可欠となります。

弁護士
そのため、弁護士が連絡役として間に入り、会社に対しご主人の業務の進捗や引継ぎの連絡をすることになるのです。
示談交渉を行う
さらに、痴漢事件で不起訴処分を得るためには、できるだけ速く、被害者との示談を成立させることが重要です。
しかし、捜査機関は、弁護士以外の者には被害者の連絡先を教えてはくれません。よって、弁護士がつかない限り、示談の話し合いを開始することさえ困難です。
弁護士による早期の示談が成立すれば、これを有利な事情として、弁護士が検察官・裁判官にはたらきかけて勾留を阻止したり、勾留期間を短くしたりできる可能性も高まり、仕事や家庭への支障を最小限に留めることも期待できます。
弁護士に依頼をすることで最短でその日のうちに示談が成立することも決して少なくありません。全ての事案でそううまくいくわけではありませんが、早急に示談に着手することでご主人にとって良い方向に動く可能性が高くなります。
痴漢の示談金の相場は?
なお、示談をする場合は、通常、被害者に示談金(慰謝料)を支払うことになります。痴漢事件の相場は、迷惑防止条例違反の事案で10〜50万円、不同意わいせつ罪の事案で50〜150万円程度です。
ただし、示談金の額は法律で決まっているものではなく、あくまでも被害者との交渉で決まりますから、これらの金額も一例に過ぎないと理解してください。
弁護士費用の目安
痴漢事件での弁護士費用の目安は次のとおりです。
弁護士費用の目安
・接見費用は、1回あたり3万円〜5万円が相場です。ただし、交通費等の実費は別途必要です。
法律事務所によっては、夜間・休日の接見に追加費用を請求することもあります。
・痴漢事件の弁護士費用の総額は、50万円から150万円程度になるのが一般的です。
接見費用以外の内訳は、示談交渉の着手金で20〜50万円、成功報酬で30〜100万円、その他実費(交通費・コピー代など)で5〜10万円です。
まとめ
ご主人が痴漢で逮捕された場合、勤務先・家庭への影響を最小限に抑えるために、「できるだけ身体拘束期間を短くすること」「示談を成立させ、不起訴処分を得ること」が大切です。
そのためには、刑事事件を専門とする弁護士に依頼し、早期に弁護活動をスタートさせることが必要です。

弁護士
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