「夫に突然、離婚したいと言われた…」
突然旦那から離婚を切り出された方は、ショックで頭が真っ白になってしまうのではないでしょうか。
「どうすればいいのか」「一方的に離婚されてしまうのか」と不安に思う方も多いでしょう。
この記事では、弁護士の立場から「夫に離婚したいと言われたときに知っておくべき法律のポイント」や「離婚に応じるべきかどうかの判断基準」「子どもやお金、住宅ローンなど生活面での注意点」について、具体的に解説します。

平成17年3月 東京都立上野高等学校卒業
平成23年3月 日本大学法学部法律学科卒業
平成26年3月 学習院大学法科大学院修了
令和5年1月 西船橋ゴール法律事務所開業
目次
離婚したいと言われたとしても、必ず応じる必要はない
まず大前提として、夫に離婚したいと言われたからといって、必ず離婚しなければならないわけではありません。
日本の法律(民法)では、夫婦の一方が離婚を望んだだけでは離婚は成立しません。
離婚するためには以下のいずれかが必要です。
- 協議離婚:夫婦双方が合意する場合
- 調停離婚:家庭裁判所の調停で合意する場合
- 裁判離婚:夫婦の一方が離婚訴訟を起こし、裁判所が認めた場合
つまり、旦那から「離婚したい」と言われただけでは、あなたが応じない限り離婚は成立しません。
ただし裁判離婚の場合、以下の 民法770条で定められた5つの法定離婚事由 があると、相手によって一方的に離婚を成立させられる可能性があります。
- 不貞行為(浮気・不倫)
- 悪意の遺棄(生活費を入れない・家を出て帰らないなど)
- 3年以上の生死不明
- 強度の精神病で回復の見込みがない場合
- 婚姻を継続し難い重大な事由(モラハラ・DV・長期間の別居など)
このような「法定離婚事由」にあてはまらない限り、夫から一方的に離婚されることはありません。
相手がなぜ離婚したいのか考えよう
夫に「離婚したい」と言われたとき、まず大切なのは「なぜ相手がそう考えているのか」を冷静に分析することです。
よくある理由としては、
- 性格の不一致
- 夫婦間のコミュニケーション不足
- モラハラや家庭内トラブル
- 浮気(不貞行為)
- 家計や金銭面の不満
があります。
特に注意してほしいのは、夫の浮気 です。
もし旦那が不倫相手の存在を隠しながら「離婚したい」と言ってきている場合、相手の不倫が証拠等で明らかとなれば、相手は有責配偶者となるため、裁判で離婚は簡単には認められません。さらに、あなたは相手や不倫相手に慰謝料を請求できる可能性もあります。
自分の気持ちについて考えてみよう
夫から離婚を切り出されると、多くの女性は「拒否したい」と反射的に思います。しかし大切なのは「自分は本当にどうしたいのか」を考えることです。
- 本当は離婚したくないのか?
- 旦那の行動や生活態度が、あなたにとって大きなストレスになっていないか?
- 子どもの将来を第一に考えたとき、どの選択がよいのか?
ショックの中で即答するのではなく、冷静に自分の気持ちを整理しましょう。勢いで「わかった、離婚でいい」と合意してしまうと、慰謝料をもらえなくなったり、財産分与や養育費の取り決めが不十分になったり、親権を失って取り戻せなくなるなど、後から取り返しがつかない不利益を受ける可能性があります。
話し合いが難航した場合は調停へ
「旦那に離婚したいと言われたけれど、話し合いが進まない」「感情的になってしまって冷静に話せない」という場合、家庭裁判所の 離婚調停 を利用するのが一般的です。
調停の流れは次のとおりです。
- 相手または自分が家庭裁判所に調停を申し立てる
- 裁判所から呼び出し通知が届く
- 夫婦が調停委員に対して交互に意見を述べる
- 双方の妥協点を探る
- 合意できれば調停成立
調停では直接顔を合わせなくてもよいので、モラハラやDVなどで恐怖を感じている方も安心して利用できます。
離婚を切り出された時に注意すべきポイント
夫から突然「離婚したい」と言われたとき、感情的になりやすいのは当然です。しかしここでの対応が今後を大きく左右します。
注意すべきポイントは以下の通りです。
- 感情的に相手を非難しない
→ ヒステリックに怒ると話し合いがうまくいかないだけでなく、「婚姻を継続し難い重大な事由」にされる可能性があります。 - 後先を考えずに別居しない
→ 夫婦が長期間別居すると、裁判所は「すでに夫婦関係が破綻している」と判断しやすくなります。実際の裁判実務では、3~5年以上別居が続くと「修復の見込みがない」と見なされ、離婚を認められるケースが増えます。特に子どもがいない場合や婚姻年数が短い場合は、さらに短い期間でも離婚が成立することもあります。つまり、感情的に家を飛び出してしまうと、結果的に離婚が成立しやすくなるリスクがあるのです。 - 不貞行為をしない
→ 浮気をすると不利になるだけでなく、慰謝料を請求される可能性もあります。 - 勢いで離婚に合意しない
→ 離婚協議書や公正証書は法的に有効な契約書です。一度署名押印すると、「慰謝料を請求しない」「財産分与は受け取らない」など不利な条件に合意してしまった場合でも、後から「やっぱり取り消したい」と主張するのは極めて困難です。特に公正証書にした場合は、支払い条件がそのまま強制執行の対象になるため、生活に大きな影響を与えます。勢いで署名する前に、必ず弁護士に内容を確認してもらう必要があります。
離婚したくない場合にするべきこと
「どうしても離婚したくない」と思う場合にできることは次の通りです。
離婚届不受理申出を提出する
「旦那が勝手に離婚届を提出してしまったらどうしよう…」と不安になる方も多いですが、市区町村役場に『離婚届不受理申出』を提出しておけば安心です。
この申出を出しておくと、相手があなたの同意なしに離婚届を出しても役所では受理されません。
つまり、勝手に離婚が成立してしまうリスクを防げます。手続き自体は本人確認書類を持って役所の窓口で申請するだけで簡単にできますし、一度提出すれば取り下げるまで効力が続きます。「離婚したくない」という強い意思を守るために、とても有効な手段です。
弁護士に相談する
離婚を望んでいないのに、旦那から一方的に「離婚したい」と言われた場合、早めに弁護士に相談しておくことが大切です。弁護士に依頼すれば、夫婦間の直接のやり取りを代理してもらえるため、感情的なぶつかり合いを避けられます。また、調停になった場合でも、法律の専門知識をもとに有利に進められるようサポートしてくれます。さらに、財産分与や養育費、生活費(婚姻費用)の請求など、こちらが受け取れるお金についても具体的に計算・主張してくれるので安心です。「離婚したくない」という気持ちを法的に守りたいとき、弁護士の存在は非常に心強い味方になります。
離婚した時にもらえるお金
万が一離婚することになった場合、女性が受け取れる可能性があるお金には以下があります。
- 財産分与:夫婦の共有財産を半分ずつ分ける
- 慰謝料:旦那の不貞やDVが原因で離婚する場合
- 養育費:子どもを引き取る場合に支払ってもらえる
- 年金分割(年金額の増加):専業主婦や収入差が大きい夫婦で利用可能
- 婚姻費用:別居中に生活費を請求できる(離婚後はもらえない)
夫に離婚を切り出された時に弁護士に相談するメリット
最後に、夫に「離婚したい」と言われた女性が弁護士に相談するメリットを挙げます。
法律上、一方的に離婚できる条件かどうかを判断してもらえる
旦那に「離婚したい」と言われても、必ずしも離婚が成立するわけではありません。民法上は「不貞行為」「悪意の遺棄」「婚姻を継続し難い重大な事由」など限られた条件が必要です。弁護士に相談すれば、相手の主張が法律上有効かどうかを冷静に判断してもらえます。「本当に離婚に応じる必要があるのか?」を専門家が教えてくれるため、無用な不安を抱えずにすみます。
慰謝料や養育費の適正額を計算してもらえる
旦那の不貞や暴力が原因の場合は慰謝料を請求できます。また、離婚後に子どもを育てる場合は養育費も必要です。これらの金額は感覚ではなく、収入や生活状況に基づいて適正に計算されます。弁護士に相談することで「いくら請求できるのか」「相手の提示額が妥当か」を具体的に知ることができ、将来の生活設計が立てやすくなります。
調停や裁判で代理人として対応してもらえる
調停や裁判は法律用語や手続きが多く、精神的にも大きな負担になります。
弁護士が代理人となれば、あなたに代わって交渉や書面作成を進めてくれます。
また、調停委員や裁判官に対しても法的根拠に基づいて主張してもらえるので、不利な条件で合意してしまうリスクを防げます。
法律的に不利な条件をその場で判断して修正を求めてくれたり、冷静に交渉を進めてくれるため、安心です。
不安が強い方ほど弁護士に依頼するメリットは大きいでしょう。
モラハラやDVから身を守るためのアドバイスが得られる
旦那からモラハラやDVを受けている場合、一人で対応するのは危険です。弁護士に相談すれば、接近禁止命令や保護命令の申立てなど、法律を使って身を守る方法を教えてくれます。また、安全な別居の進め方やシェルターの利用など、具体的な生活面でのアドバイスも受けられるので、安心して行動に移せます。
住宅ローンや財産分与の複雑な問題に対応できる
夫婦で住宅ローンを組んでいたり、不動産や貯金、退職金などの財産がある場合、離婚時の分け方はとても複雑です。どこまでが共有財産になるのか、ローン付きの家をどう処理するのかは素人判断では難しい部分です。弁護士は法律と実務に基づいて最適な解決策を提案してくれるため、財産を不当に失うリスクを避けられます。
「夫に離婚したいと言われた」ときは、感情的になって判断を誤りやすいものです。専門家の助言を受けることで、冷静に最善の選択をすることができます。
まとめ
夫から「離婚したい」と言われたとき、最も大切なのは 冷静に対応すること です。相手の言葉にショックを受けても、すぐに離婚に応じる必要はありません。
- 離婚は一方的には成立しない
- 夫の浮気やモラハラがあれば慰謝料請求も可能
- 自分の気持ちや子どもの将来を優先して考える
- 調停や弁護士相談を活用する
突然の「離婚したい」という言葉に振り回されず、今後の生活を守るために正しい知識を持って行動しましょう。