未成年淫行とは?取り調べの流れや法律のルールについて弁護士が解説
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「淫行」とは、大人が18歳未満の未成年者と性交や性交類似行為を行うことを指します。
淫行は青少年健全育成条例などの違反として処罰されるケースが多く、たとえ相手の合意があったとしても、年齢によっては犯罪として扱われることがあります。
犯罪になる可能性があるということは、逮捕されて実際に警察から取調べを受ける可能性があるということです。
逮捕や取調べとなると「何を聞かれるのか」「どのように対応すべきか」という疑問を持つ方もいらっしゃるでしょう。
この記事では、未成年淫行の定義、取り調べの流れ、逮捕や不起訴の可能性、法定刑の内容などを、刑事事件に詳しい弁護士の視点でわかりやすく解説します。

平成17年3月 東京都立上野高等学校卒業 平成23年3月 日本大学法学部法律学科卒業 平成26年3月 学習院大学法科大学院修了 平成27年9月 司法試験合格 アトム市川船橋法律事務所 令和5年1月 西船橋ゴール法律事務所開業 所属:千葉県弁護士会
目次
淫行とは?
淫行という言葉はどのような行為をさしているのでしょうか。言葉を聞いたことがあっても意味を知っているという人は少ないかもしれません。
まずここでは「淫行」とはどんな行為を指しているのかについて解説します。
淫行は大人が未成年者と性的な行為を行うこと
「淫行」とは、成人が18歳未満の未成年者と性的な関係を持つことを意味しています。

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たとえ本人同士が合意していたとしても、条例違反等で処罰される可能性があるということです。
特に、相手が16歳未満の場合は「同意の有無」にかかわらず刑事事件として立件されることもあるため、場合によっては逮捕・取調べの対象となるケースがあります。
ただし、未成年者同士の場合は淫行には該当しないとされています。
また、真剣な交際をしている者同士の性行為であれば、みだらな行為に該当しないため条例違反にはならないケースもあると考えられています。
また、条例違反の場合は、地域ごとに罰則や条文内容が異なるため、同じ行為であっても処罰の内容が異なる点にも注意が必要です。
以下では、淫行の定義、わいせつ行為との違い、各地の条例と刑罰内容、前科の扱いについて詳しく見ていきます。
淫行とわいせつ行為は違う
「わいせつ行為」と「淫行」は似ているようで実は違うものです。
わいせつ行為とは、性交や性交類似行為だけでなく、キス、胸部や臀部を触る、性的な意図をもって体に触れるといった行為を含みます。
一方、「淫行」は、性交または性交類似行為(口腔性交・肛門性交など)に限定されます。
つまり、「わいせつ行為」のほうが「淫行」より広い概念であり、「わいせつ行為」の中に「淫行」が含まれる形となります。
ただし、警察の捜査段階では「淫行」として立件されても、検察官が行為の内容を精査した結果、「強制わいせつ」や「不同意わいせつ罪」として起訴されるケースというものもあります。

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どの罪名が適用されるかは行為の具体的な態様と被害者の年齢・同意の有無によって異なります。
淫行は性的関係を伴う重大な行為、わいせつ行為はそれより広く軽微な接触を含む概念であるため、警察や検察の判断・供述内容次第で処分の結果が変わることを理解しておきましょう。
淫行の処罰は青少年健全育成条例違反に基づく
淫行に関する処罰は、刑法ではなく、各都道府県の青少年健全育成条例に基づいて行われます。
条例は地域によって内容が異なるため、淫行条例の刑罰についても地方公共団体によって異なります。
青少年健全育成条例の目的は、青少年を性犯罪や性的搾取から保護し、心身の健全な成長を守ることにあります。
多くの条例では「青少年(18歳未満)」に対して、みだらな性行為や性交類似行為を行うことを禁止しており、これを「淫行」と定義しています。
淫行条例の刑罰の例
- ・東京都:東京都青少年の健全な育成に関する条例(条例第18条の6) 法定刑 法定刑は2年以下の懲役または100万円以下の罰金
- ・大阪府:大阪府青少年健全育成条例(条例第39条)法定刑 2年以下の懲役又は100万円以下の罰金
- ・福岡県:福岡県青少年健全育成条例(条例第38条1項1号)法定刑 2年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金
このように、表現にわずかな違いがあるものの、全国的に「2年以下の懲役または100万円以下の罰金」という上限が設定されているのが一般的です。
条例と聞くと法律より軽いように思われがちですが、実際には逮捕・取調べを経て起訴され、有罪判決を受ければ前科が付く刑事事件となります。
もちろん、上記は一例であり、青少年健全育成条例は全国のすべての都道府県に存在していて、細かい文言や立証基準は異なるものの違法行為として位置づけられています。
条例違反でも前科になる
誤解されることもあるのですが、青少年健全育成条例違反は「刑法ではないから罪が軽い」わけではありません。
条例に基づく犯罪行為であっても、刑事事件として正式に立件・起訴され、有罪判決を受ければ「前科」が付きます。
この「前科」というのは、単に拘禁刑だけでなく、罰金刑・略式命令による有罪でも記録として残るということになります。
たとえば、検察官が略式起訴(書面だけでの簡易手続)を行い、裁判所が罰金刑を言い渡した場合であっても、その瞬間に「有罪判決」となります。
つまり、略式手続は一見軽く見えますが、刑事記録としては通常の裁判と同じ扱いであり、刑罰を科されたという事実が残るのです。
一方で、「前歴」という言葉も存在します。
前歴とは、逮捕や書類送検など「捜査の対象になった履歴」を指します。
前歴は有罪判決を受けなければ前科にはなりませんが、警察や検察の内部データベースには記録が残り、再び事件に関与した際には参照されます。
つまり、青少年健全育成条例違反は前科にも前歴にもなり得る重大な法的リスクを伴う行為なのです。
前科が付くと、日常生活にも少なからぬ影響があり、再就職や海外渡航の際に経歴調査で不利になるケースも報告されています。
特に性犯罪に関わる条例違反は、社会的な印象も重く、周囲に知られることで心理的ダメージが大きい点も無視できません。
逮捕された時点で実名報道されるケースもあるため、その影響はとても大きくなります。
淫行が事件化した場合の取調べの流れ
淫行が事件になり、逮捕された場合の取調べはどのように行われるのでしょうか。
ここで取り調べについて解説していきます。
取調べとは
ここで大切なことは、取調べは、警察や検察官が事件の真相を明らかにするために行う「捜査」の一つであるということです。
逮捕されると身体拘束されるため、刑罰を受けているようにも思えますが、逮捕は「処罰」ではなく、あくまで「証拠収集」の捜査のための手段なのです。
そのため、取調べは、それ自体が刑罰というわけではなく事件を解決するための捜査の一環です。
たたし捜査の内容で送検されるのか、起訴されるのかが決まるためここで誤った供述や曖昧な回答が後の供述調書に残ると、裁判で不利になることがあります。
警察官が供述調書を作る
取調べは原則として、被疑者が話した内容を警察官や検察官が取調べで事件の詳細を確認してから「供述調書」としてまとめて内容を整理して捜査を進めて検察に送致するかを判断します。
この供述調書は後に裁判になったときに証拠として扱われる可能性が高いため、内容をしっかり確認してから署名することが極めて重要です。
取調べのあとで調書にサインを求められますが内容を確認して調書に「違う部分がある」「言っていないことが書かれている」と感じた場合は、署名する前に訂正を求めましょう。

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この署名については、警察官は強要することはできません。
また、この段階で弁護士に刑事事件の弁護を依頼して相談すれば、どのような回答をすべきかといった適切な助言を受けられます。
威圧的な取り調べや長時間の取り調べはNG
淫行事件にかぎらず、威圧や長時間の取り調べは違法となる可能性があるため、行ってはいけません。
例えば、警察官や検察官が威圧的な態度をとったり、深夜に長時間取り調べを行ったりすることは、違法とみなされる場合があります。

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ドラマで見るような、机をたたいたり、被疑者を乱暴に扱う取り調べは違法です。
たとえ事件の解決のために行う捜査だという理由があったとしても、人権を侵害するような取り調べは法律で禁止されており、強制的に自白などの供述を得ることも認められていません。
長時間の取り調べや、睡眠を妨げるような取り調べが行われた場合は、弁護士を通じて「違法捜査の主張」を行うこともできます。
外部との連絡は原則弁護士のみ
逮捕・勾留中の被疑者は、外部との連絡が大きく制限されます。
特に、逮捕直後は弁護士以外の方は接見(面会)できません。
ご家族の方などが面会できるのは、原則通常勾留決定後(4日目以降)からとなります。
「接見禁止処分」が付いた場合は、ご家族との面会も禁止されますが、弁護士との接見については権利であるため捜査機関がこれを拒否することはできません。
逮捕されていても弁護士との接見は法律で認められた権利であるため、法律事務所に依頼して弁護士から取り調べ内容や今後の流れに関するアドバイスをもらうことができます。

弁護士
正式に依頼を受けた弁護士は、刑事事件の弁護に加え、被害者との示談交渉を代行できます。
逮捕されて取り調べを受けている場合は、自由が制限されて自分で相手方との交渉や謝罪はできません。
そのため、できるだけ早く弁護士に相談することが大切です。
淫行は初犯でも逮捕されるのか
未成年の淫行が明るみに出た場合は、それが初犯であっても逮捕されるのでしょうか。
淫行という犯罪は性的関係というとてもプライベートな部分に関するものであり、また、未成年者を守るための法律でもあるため、例え、前科がない初犯であっても逮捕拘留される可能性はあります。
逮捕の可能性はある
淫行は、初犯であっても逮捕される可能性があります。特に以下のような場合は、逮捕に至るケースが少なくありません。
初犯でも逮捕される可能性が高いケース
- ・容疑を否認している場合(供述が得られない)
- ・住所が不明、逃亡の恐れがある場合
- ・スマートフォンやSNSの履歴削除など、証拠隠滅の恐れがある場合
一方で、犯行の態様が軽く、被疑者が捜査に協力的な姿勢を見せている場合は、在宅事件起訴や書類送検にとどまるケースもあります。
起訴するかどうか、そして、送検について判断は警察・検察官によって異なりますが、弁護士を早期につけることで適切な対処ができるのは事実です。
初犯だから逮捕されないという保証はありません。
むしろ未成年者が被害者となる重大な犯罪であるため、事件の解決のために逮捕される可能性は高いと考えた方がいいでしょう。
悪質と認められると逮捕される可能性が高くなる
淫行の内容が悪質と判断される場合、初犯であっても逮捕・勾留となる可能性が高くなります。
「悪質」と評価されるかどうかは、行為の内容、被害者の年齢、関係の継続性、被害者の同意の有無など、複数の要素によって総合的に判断されます。
一般的に、以下のような場合は「悪質」とされやすいといえます。
悪質とされやすいケース
- ・被害者の年齢が著しく低い(特に13~14歳以下)
- ・複数の被害者がいる、または繰り返し行為があった
- ・不特定多数に接触していた
- ・金銭の授受(買春行為)があった
- ・性的関係を条件に高価な物を与えた
- ・被害者に精神的・身体的な被害が残った
上記に該当する場合、警察は「社会的影響が大きい」「悪質である」と判断し、逮捕・勾留による身柄拘束を伴う捜査を選択する傾向があります。
また、金銭のやり取りがあった場合は、青少年健全育成条例違反だけでなく、児童買春・児童ポルノ禁止法違反、不同意性交罪などの犯罪に該当する可能性もあります。
逮捕されると最長で23日の身体拘束となる
逮捕後、警察による取り調べが行われることになりますが、検察官送致後にさらに勾留が認められると最大23日間の身体拘束が続く可能性があります。
この間、原則として外部との連絡は弁護士を通じて行うこととなります。
特に逮捕直後や接見禁止処分が付いた場合には、直接相談ができるのは弁護士のみとなります。
逮捕直後や接見禁止処分が付いた場合、家族や友人、職場の人との直接の相談は一切できません。
弁護士は、接見を通じて被疑者の供述内容を整理し、示談交渉や不起訴処分を目指すための戦略を立てて弁護活動をします。
まとめ
淫行は、未成年者に対して成人が性行為を行うことを意味しています。
淫行では、たとえ合意があったとしても、年齢によっては青少年健全育成条例違反や児童買春、わいせつ罪などの刑事事件として扱われるケースがあります。
つまり、発覚すれば警察による取調べが行われ、初犯であっても逮捕される可能性があります。
逮捕、勾留された場合は、外部との連絡は大きく制限されます。
そのため、早期に刑事事件の弁護が得意な弁護士や法律事務所に相談し、示談や不起訴処分を目指すことが最も重要です。
少年事件や性犯罪事件の経験が豊富な弁護士であれば、取調べ対応・被害者との交渉・不起訴への道筋を的確に示してくれるでしょう。
未成年淫行を起こしてしまって不安な方・未成年淫行で逮捕されそうな方は、千葉県船橋市の刑事弁護士 西船橋ゴール法律事務所までご相談ください。
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