不起訴にしてほしい
起訴されてしまうと、ほぼ確実に有罪となり、罰金刑で済んだとしても、前科がついてしまい、その後の社会生活で様々な弊害が生じてしまいます。
これを避けるためには不起訴処分を勝ち取ることが大切ですが、不起訴処分は、事件後、大人しく過ごすだけでは勝ち取れません。
弁護士に依頼して被害者と示談交渉を行い、示談書と告訴取消書を作成してもらうことが重要です。
起訴とは
起訴とは、検察官が刑事事件を裁判所に提起することです。
検察官が起訴した場合の有罪率は99.9%と言われています。
つまり、検察官が起訴した場合、弁護士にできることは、刑罰の減免を求めることくらいで、ドラマのように無罪を勝ち取ることは相当難しいと考えてください。
起訴されてしまうとほぼ確実に有罪となり前科が付いてしまいます。
起訴されて有罪になった場合のデメリット
起訴されて有罪になった場合、様々な弊害を被ることになります。
まず、拘禁刑(懲役刑・禁錮刑)が科された場合は、その期間、刑務所に入り、社会から隔絶されてしまいます。
服役し出所した後も、前科がついてしまうため、社会生活において様々な支障が生じます。
特に大きいのが、職を失い、再就職もままならなくなる可能性があることです。
まず、資格が必要な仕事をしている場合、資格によっては、拘禁刑を受けた後、数年間は登録ができないケースもあります。
(例)禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から五年を経過しない者は宅地建物取引士の登録を受けられない。(宅建業法18条)
起訴前に在籍していた会社からは懲戒解雇されてしまうこともありますし、服役しなくても、前科がばれてしまうと、再就職が難しくなることもあります。
こうした様々な弊害を避けるためには、不起訴を勝ち取ることが非常に重要になります。
検察官が起訴、不起訴の処分を決定する期間
不起訴処分を勝ち取るには、検察官が起訴、不起訴の処分を決定するまでに、有効な弁護活動を行うことが大切です。
検察官が起訴、不起訴の処分を決定するタイミングは、被疑者が勾留されているかどうかで異なります。
被疑者が勾留されている場合は、10日、20日間といった勾留期間中に、起訴、不起訴の処分を決定しなければならないことになっています。
そのため、勾留されている被疑者の不起訴を勝ち取るためのタイムリミットは限られています。
一方、勾留されていない場合は、起訴、不起訴の処分の判断は先送りにされることが多く、数か月、1年といった期間が経過してから、判断されることもあります。
勾留されていないのであれば、余裕を持った弁護活動が可能ですが、検察官がどの程度捜査を進めているのかは、不明なので、早めの対応が必要です。
不起訴となる場合
検察官が被疑者を不起訴とするのは次のような場合です。
訴訟要件を具備していない場合
事件が訴訟要件を具備していなければ、不起訴処分以外の選択肢はありません。
代表例は、事件の罪が親告罪である場合に、被害者が告訴を取り下げたケースです。
器物損壊などの軽微な犯罪が親告罪とされていることが多いですが、被害者が告訴しなければ、起訴できない犯罪です。
被害者が告訴を取り下げれば、検察官が判断するまでもなく、不起訴になります。
嫌疑なしの場合
検察官が事件を捜査した結果、犯罪を犯したと認定すべき証拠がないことが明白な場合は、不起訴とします。
嫌疑不十分の場合
検察官が事件を捜査したものの、犯罪を犯したと認定すべき証拠が十分にそろっていない場合は、不起訴とします。
起訴猶予
検察官が捜査した結果、犯罪の事実が認められて、起訴すれば有罪となる可能性が高いものの様々な事情を考慮して、あえて起訴しない判断をする場合です。
代表的なのが、被害者との間で示談が成立していて、被害者も被疑者の処罰を望んでいないような場合です。
また、被疑者が深く反省していることや比較的軽い犯罪であることも考慮されます。
不起訴処分を勝ち取るには
不起訴処分は、何もせずに、大人しく過ごすだけでは勝ち取れません。
検察官は被疑者の逮捕後の日常生活をチェックして、起訴するかどうか決めているわけではないからです。
不起訴処分を勝ち取るためにやるべきことは、被害者への謝罪と弁償を行い、示談を成立させたうえで、告訴取消書または処罰を求めない旨の書面に署名してもらうことです。
被害者との示談交渉は弁護士に依頼する
被害者との示談交渉は、加害者本人だけで行うことは難しいと考えてください。
状況によっては門前払いされてしまうこともありますし、話は聞いてもらえても、相場以上の高額な示談金を求められてしまう可能性もあります。
その点、弁護士が出ていけば、門前払いにされることはめったにありませんし、示談金に関しても、ほかの事件の例を挙げながら、適切な価額を提示して、納得してもらうこともできます。
告訴の取り下げにしても、加害者本人が直接頼んでも、応じてもらえないこともあります。
告訴の取り下げまで持ち込むまでの交渉方法には一定のテクニックもあり、慣れている弁護士でなければ難しいものです。
示談書と告訴取消書を検察官に提出する
被害者との示談を成立させたら、示談書と告訴取消書または処罰を求めない旨の書面を検察庁に提出します。
事件を担当する検察官は、これらの書面を受け取ると、被害者に電話などで、示談が間違いなく成立したのかを確認します。
この時、被害者の方から、「騙されて示談書を書かされた」「示談には全く納得していない」といったような申し出がなされてしまうと、せっかく提出した書面が無駄になってしまいます。
こうしたことを避けるためには、被害者の方に、示談書と告訴取消書にサインしてもらう際には、真摯に謝罪する姿勢を示すことが大切です。
まとめ 不起訴を勝ち取るには弁護士のサポートが必須
不起訴を勝ち取るには、被害者の方と示談を成立させて、示談書と告訴取消書または処罰を求めない旨の書面を作成することが最も有効な手段になります。
そのためには、被害者の方とできる限り早く、スムーズに示談交渉を行うことが大切です。
勾留されている場合は、加害者本人が示談に出向くことはできませんし、釈放されている場合も、加害者本人だけで示談に出向いても、スムーズに示談交渉ができないこともあります。
被害者との示談交渉は、慣れている弁護士に代理を頼むか、弁護士に同席してもらうのが確実です。