公務員だが穏便に済ませたい
公務員の方は、厚く保障された身分を有しており、安定した生活を送られている方が多いかと思います。
しかし、ひとたび刑事事件を起こしたり、冤罪事件に巻き込まれたりしてしまいますと、安定した生活を失う可能性があります。
そこで、今回の記事では、公務員の方が刑事事件を起こしたり、冤罪事件に巻き込まれたりしてしまった場合のリスクやリスクの回避方法などについて解説します。
刑事事件を起こした場合等のリスク
報道される可能性
公務員が刑事事件を起こした場合、そのことが警察や報道機関に発覚しますと、一般の方と同様に報道される可能性があります。
まず、公務員が刑事事件を起こし警察に逮捕されると、警察から報道機関に事件が公表される可能性があります。
そうすると、報道機関は、公務員が逮捕されたことを報道によって公表する可能性があります。
報道機関は、報道する際、公共性の強さ、話題性の有無、逮捕された方の社会的地位などを総合的に考慮し、刑事事件を報道していると思われます。
公務員は、その職業性から、公共性が強く、話題性もあり、社会的地位の高い方も多いかと思いますので、一般の方と比べ、刑事事件を起こした際に報道される可能性が高いといえます。
報道された場合に実名報道されるか否かは、捜査機関や報道機関の判断で決められてしまいます。
弁護士が就いた場合でも、弁護士が警察や報道機関に働きかけ、実名報道などを回避することは難しいです。
しかし、警察が報道機関に事件を公表するタイミングを熟知していれば、その手前の段階で、報道されないよう手を打つことは可能です。
逮捕されてしまいますと報道機関によって報道される可能性が高いため、刑事事件を起こしてしまった場合は、すぐに弁護士に相談し、場合によっては報道されるリスクが高まる前に弁護士に報道されないよう手を打つのが良いかと思います。
長期間身柄拘束をされてしまう可能性
公務員が逮捕されてしまった場合、逮捕された方は、48時間以内に検察官へ送られることになります。
その後、検察官は24時間以内に裁判所に対して逮捕した公務員を10日間勾留するよう意思表示をするか否かを検討します。
検察官が裁判所に対して勾留請求をすると、裁判所は、10日間の勾留を認めるかどうかの判断をします。
ここで、裁判官が10日間の勾留を認めると、公務員の方は、原則として10日間身体拘束をされることとなってしまいます。
また、10日間で取り調べが十分に終わらない場合、検察官は、裁判所に対して、さらに10日間の勾留を延長するよう請求します。
そうすると、逮捕された公務員の方は、最大で23日もの長期間、起訴されるまでの間に警察署などで留置されることになるのです。
加えて、起訴後に保釈請求をしなければ、起訴された公務員の方は、そのまま起訴後勾留をされ、判決が出るまで身柄拘束が続いてしまいます。
起訴休職となる可能性
起訴休職とは、公務員が検察官から起訴された場合に、休職させることができる制度です。
この起訴休職の期間は起訴された日から判決が確定する日までです。
起訴されてから判決確定までの期間が長くなればそれだけ休職期間が長くなります。
起訴休職中の給与についてですが、国家公務員は給与と各種手当の60%まで支給することができるとされています。
地方公務員においても、各地方自治体の条例で給与や手当等に関する規定が設けられています。
なお、検察官による起訴には公判請求と略式請求の2種類ありますが、略式請求されて起訴休職の処分を受けることはなく、公判請求された際に起訴休職となるのが一般的です。
当然失職となる可能性
当然失職とは、公務員が欠格条項に該当した場合に失職することを意味します。
刑事事件についての公務員の欠格条項は、「禁固以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者」というように規定されています。
この欠格条項の内容は国家公務員でも地方公務員でも同じです。
罰金であれば該当しませんが、懲役刑や禁固刑の場合は、執行猶予が付いても欠格条項に該当してしまいます。
懲戒処分を受ける可能性
公務員が起こしてしまう可能性のある犯罪としては、自動車事故や窃盗、器物損壊、暴行、傷害、痴漢、盗撮などの比較的軽い犯罪が挙げられます。
これら比較的犯罪については、被害者の方と示談を成立させることで不起訴処分となることが多いです。
不起訴処分となれば、公判請求をされることはありませんので、起訴休職や当然失職になることはありません。
ただし、勤務先から懲戒処分を受ける可能性はあります。
懲戒処分には、戒告、減給、停職、免職があります。
最も重い免職処分を受けると、処分の日から2年間は官職に就くことができません。
公務員が刑事事件を起こしてしまった場合、犯罪ごとに懲戒処分の内容はおおよそ決まりますが、次の事情のうち該当するものが多ければ多いほど、処分が軽くなるように思えます。
すなわち、行為の悪質性が低いこと、結果が重大とまではいえないこと、自ら勤務先に事件のことを報告していること、勤務先の聴き取り調査等に協力していること、深く反省していること、被害者と示談が成立していること、再犯防止の対策を講じられていること、これまで懲戒処分を受けたことがないこと、勤務態度が良好であること等です。
刑事事件のリスクを回避する方法
公務員が以上のようなリスクを回避するためには、警察や勤務先に事件が発覚する前に被害者の方と示談等で解決することが重要となります。
被害者の方と早期示談が成立すれば、勤務先から懲戒処分を受けるリスクや報道されるリスク、起訴されることによる起訴休職や当然失職のリスクを低くすることが可能となります。
そのため、公務員が事件を起こしてしまった場合には、早期の段階で示談に着手し、警察や職場、報道機関に発覚することを回避するのが最も肝要といえるでしょう。