児童ポルノ、児童買春
児童ポルノ、児童買春に関する犯罪は厳罰化されています。
かつては、児童ポルノを配信している人だけが刑罰の対象でしたが、現在では所持しているだけでも刑罰を受けてしまいます。
世界的にも、児童ポルノ、児童買春に関する犯罪に関しては、厳しい目を向けられているため、逮捕、起訴されてしまうリスクが高まっています。
児童ポルノ、児童買春とは何か。また身に覚えがある方はどう対処したらよいのかを紹介します。
児童とは
児童ポルノ、児童買春については、児童ポルノ法(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律)により規制されています。
児童というと一般的には小学生を指しますが、児童ポルノ法では、児童とは、「18歳に満たない者」と定義されています。
よって、中学生や高校生でも児童に当たることに留意しましょう。
児童ポルノとは
児童ポルノについては、児童ポルノ法に定義があり、次のような写真、電磁的記録が該当するとされています。
- ・児童が性交または性交類似行為をしている姿態
- ・児童が性器等を触る行為等をしている姿態
- ・衣服をつけない状態で殊更に児童の性的な部位が強調されている姿態
児童ポルノに関する罰則
児童ポルノに関しては、所持、提供等が罰せられます。
具体的には次のような場合です。
- 自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した場合等
- 1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金
- 児童ポルノを提供した場合等(提供目的で製造、所持、運搬、輸出入、保管する行為も含む)
- 3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金
- 児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した場合等(提供目的で製造、所持、運搬、輸出入、保管する行為も含む)
- 5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
例えば、インターネット上で、児童ポルノのサイトを運営している場合は、最も重い刑罰を受けてしまうことになります。
サイトに掲載する画像や動画を撮影する行為も同様です。
注意したいのは、運営者だけでなく、児童ポルノの画像や動画をダウンロードしてパソコンに保管しているだけでも、刑罰の対象となってしまう点です。逮捕された業者に購入記録が残っている場合などは、警察に捜査される可能性もあります。
なお、自分の子どもの水着姿の画像や動画も児童ポルノに該当するのではないかとの懸念を抱かれる方もいらっしゃるかもしれませんが、両親等が成長の記録や思い出として残している場合や思い出として卒業アルバムを持っている分には、何ら問題はありません。
ただ、自分の子どもの写真でも、インターネット上の児童ポルノのサイトに提供する行為は、刑罰の適用を受けてしまいますので注意してください。
児童買春とは
児童買春についても、児童ポルノ法により定義され、規制されています。
児童買春とは、対償を供与し、又はその供与の約束をして、児童に対し、性交等を行うことです。
対償の内容は金銭が一般的ですが、プレゼント、食事、電子マネーなどの形で利益を供与する場合も含みます。
現実に供与しただけでなく、約束しただけでも該当することに注意しましょう。
対償を与える相手は、児童本人のほか、児童に対する性交等の周旋をした者、児童の保護者、児童をその支配下に置いている者です。
また、性交等は次のように定義されています。
- ・性交
- ・性交類似行為
- ・自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。)を触る。
- ・自己の性的好奇心を満たす目的で、児童に自己の性器等を触らせる。
児童買春の罰則
児童買春に関する罰則は、児童ポルノに基づくものと刑法によるものの2種類があります。
児童ポルノに基づく罰則
児童買春に関して罰せられるのは次の人たちです。
- 児童買春をした者
- 5年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金
- 児童買春の周旋・勧誘をした者
- 5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
- 児童買春の周旋・勧誘を業とした者
- 7年以下の拘禁刑及び1000万円以下の罰金
- 児童買春等の目的で児童の人身売買をした者
- 1年以上10年以下の拘禁刑
児童買春は刑法上の不同意性交等罪や不同意わいせつ罪に該当することもある
児童買春を行うことは、刑法上の不同意性交等罪や不同意わいせつ罪に該当する場合もあります。
まず、児童が嫌がっているなど不同意の状態にあるのに性交等を強制した場合は当然、不同意性交等罪や不同意わいせつ罪に該当します。
また、児童の年齢によっては、不同意の状態にあるかどうかに関係なく、不同意性交等罪や不同意わいせつ罪に該当することもあります。
- 児童が13歳未満の場合
- 児童買春は当然に不同意性交等罪や不同意わいせつ罪に該当する。
- 児童が13歳以上16歳未満の場合
- 児童買春をした人が児童より5歳以上年長の場合は当然に不同意性交等罪や不同意わいせつ罪に該当する。
不同意性交等罪と不同意わいせつ罪の法定刑はそれぞれ次のとおりです。
- 不同意性交等罪
- 5年以上の有期拘禁刑
- 不同意わいせつ罪
- 6月以上10年以下の拘禁刑
児童買春の罰則よりも重くなるため、「3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金」の言い渡しを受ける場合に対象となる執行猶予が付きにくくなります。
また、罰金刑のみで済むことはなく、執行猶予なしの有罪判決の場合は、刑務所に入るしかなくなります。
実際に会わない場合でも面会要求等罪に該当することもある
児童買春、不同意性交等罪、不同意わいせつ罪はいずれも児童に対して、性交等やわいせつ行為を行った場合に成立する犯罪です。
ただ、対象の児童が16歳未満の場合は、実際に性交等やわいせつ行為を行なわなくても、わいせつ目的で面会を強要しただけで、面会要求等罪に該当することもあります。
例えば、次のような場合です。
- ・威迫し、偽計を用い又は誘惑して面会を要求した場合。
- ・拒まれたにもかかわらず、反復して面会を要求した場合。
- ・金銭その他の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をして面会を要求した場合。
対象の児童が13歳未満の場合は、当然に面会要求等罪に該当します。
児童が13歳以上16歳未満なら、面会要求した人が児童より5歳以上年長の場合に面会要求等罪に該当します。
法定刑は、1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金です。
わいせつな画像や動画を送るよう要求した場合も面会要求等罪に該当する
また、対象の児童が16歳未満の場合は、わいせつな画像や動画を送るよう要求した場合も面会要求等罪の一種として、刑罰の対象となります。
対象の児童が13歳未満の場合は、当然に面会要求等罪に該当します。
児童が13歳以上16歳未満なら、送信を要求した人が児童より5歳以上年長の場合に面会要求等罪に該当します。
法定刑は、同じく、1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金です。
児童買春で逮捕されるケースとは
児童買春で逮捕されるケースは少ないとされています。
2021年の検察庁のデータでは、児童買春の嫌疑をかけられた人は3112人。
そのうち、逮捕されて検察庁に身柄を送致された人は653人にとどまります。
残りの2459人は、逮捕されなかったり逮捕されてもすぐに釈放されています。
児童買春で逮捕されやすいかどうかは、常習性の高さ、証拠の有無、複数の犯罪に該当するかどうかなどで異なります。
例えば、
- ・複数の児童と児童買春していたり、長期間にわたって繰り返していた場合。
- ・児童買春を裏付ける証拠がSNSやスマホ、パソコンなどにはっきりと残っている場合。
このような場合は逮捕されやすくなってしまいます。
検察庁のデータ
https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003274094
児童買春で逮捕、起訴、重罰を免れるためには
児童買春で逮捕されてしまうと、通常の刑事事件同様に、勾留、起訴に進んでしまいます。
また、実名入りで広く報道されてしまったり、報道がなくても、職場や周囲に知られてしまうと、社会的な評価は著しく下落してしまいます。
そのため、身に覚えがあるなら、逮捕されないようにすることが重要と言えます。
児童買春で逮捕、起訴されたり、重い実刑判決を受けることを避けるためには、弁護士に依頼して、被害児童との示談を成立させることが重要です。
示談交渉の内容は、他の刑事事件と同じですが、未成年者との交渉になるため、被害児童だけでなく、その保護者の心情も考慮しなければなりません。
ただ、被害児童の実名や住所が分からないケースでは、事件化しない限り、接触が難しいこともあります。
そのような場合は、警察に発覚するまでの間に、自首することも選択肢になります。
自首した場合は、刑法42条により、起訴されたとしても刑が減軽されることもあるためです。
児童買春に関して身に覚えがあるなら弁護士にご相談ください
児童買春の罪で逮捕されてしまうケースは少ないですが、いったん逮捕されてしまうと、社会的信用は大きく下落し、職場から解雇されたり、現在の家族・親族関係が崩壊してしまう可能性が高いです。
児童買春に関して身に覚えがある方や、付き合っている相手が未成年だと知らなかったといったトラブルを抱えてしまった方は、早めに弁護士にご相談ください。
被害児童との示談交渉はもちろん、事案に応じた適切な対処方法について、アドバイスさせていただきます。