依頼を受けた弁護士は何をしてくれる? 刑事弁護士の活動内容について解説

テレビや映画などでは、逮捕された被疑者は「弁護士を呼んでくれ」というセリフを言ったりしますが、呼ばれた弁護士は、実際に弁護士はどんなことをしてくれるのでしょうか。
この記事では、依頼を受けた弁護士の具体的な活動内容について解説します。
目次
逮捕直後~勾留までの段階
被疑者との接見
被疑者とは、犯罪をした疑いをかけられ、捜査を受けている人のことをいいます。
被疑者は警察に逮捕されると警察署に身体拘束をされてしまいます。
【参考記事】
逮捕されたらどうなってしまうの?逮捕の必要性や逮捕後の流れについて解説
逮捕から72時間以内は、原則として、被疑者は、家族や友人と会うことができません。
そこで、登場するのが、弁護士です。
逮捕から72時間以内の間に被疑者と接見することができるのは、弁護士だけなのです。
そのため、依頼を受けた場合、弁護士は、被疑者と直接会って、今後どのような対応をすべきかの助言をしたり、その状況を把握することができます。

赤井耕多
これが、依頼を受けた弁護士ができる最初の仕事といえるでしょう。
弁護士が接見に行くメリット
・取調べに向けてのアドバイスできる
・事件の詳細をヒアリングし、家族や知人の方に伝えることができる
・今後の見通しを伝えることができる
・違法な捜査が行われていないか確認することができる
・精神的な支えになる
検察官、裁判官への勾留阻止の働きかけ
次に、弁護士は、被疑者が勾留されるのを防ぐために、動きます。
勾留とは、検察官が、勾留請求を行い、裁判官が審理し、勾留を認めた場合に、警察署の留置所や拘置所などの刑事施設で被疑者を拘束することをいいます。
勾留は、最大で20日間認められており、その間は、刑事施設で拘束されることになります。そして、検察官の勾留請求から、裁判所が勾留を認めるかどうかの判断は、逮捕から72時間以内の間でなされます。
そして、弁護士は、この勾留請求を阻止するために、検察官に連絡をとって、どのような見込みかを確認したり、裁判官に勾留請求を阻止するために意見書を提出したりします。

川口晴久
この意見書には、勾留をする必要がないことを記載します。
勾留の要件
①住居不定
②罪証隠滅の恐れ
③逃亡の恐れ
※上記のうちどれか
勾留が認められるための要件は、①住居不定②罪証隠滅の恐れ③逃亡の恐れのうちのどれかがある場合です。
つまり、弁護士は、被疑者には、こういう理由で罪証隠滅の恐れはない、こういう理由で逃亡のおそれはないなどと記載した意見書を作成し、裁判官に提出するのです。
これが、弁護士のする次の仕事であり、この仕事は72時間以内にする必要があるため、とにかくスピード勝負になるといえます。
【参考記事】
刑事事件はなぜ「スピード勝負」と言われるの?|勾留や起訴を阻止するタイムリミットとは
被害者との示談交渉
刑事弁護活動をする中で、被害者との示談交渉は非常に重要です。
示談が成立した場合
・前科を回避できる可能性が上がる
・早期釈放される可能性が上がる
・起訴されても刑が軽くなる可能性が上がる(執行猶予がつくなど)
被害者と示談交渉をするには、まず、被害者と連絡を取ることが必要となってきます。
しかし、被疑者が直接被害者に連絡をとることは、感情面からしても難しいといえるでしょう。
連絡先を教えてもらえない場合も多いです。
そこで、弁護士が、被疑者の代理人として、被害者の方と示談交渉をしていくことになるのです。
勾留~起訴までの段階
検察官、裁判所に対する勾留延長阻止の働きかけ
それでは、勾留請求が認められてしまった場合には、どうすればよいのでしょうか。
弁護士は、勾留請求が認められてしまった場合には、直ちに、準抗告を申し立てることになります。
これは、勾留請求が認められたのはおかしいとして、異議を申し立てることを意味します。準抗告の訴えが認められた場合には、勾留が取り消され被疑者は釈放されることになります。
また、準抗告の申立てが認められなかった場合でも、勾留延長を阻止できる場合があります。
最初の勾留請求で認められるのは最大で10日間までの勾留ですが、勾留延長の決定が出た場合には最大で20日間まで延長されます。
検察官が勾留を延長することを請求し、裁判官が「やむをえない事情がある」と認める場合に勾留延長が認められます。
この「やむをえない事情」とは、10日間では、必要な捜査が終わっていない、延長することで、できなかった捜査をすることができるようになるなどの理由があげられます。
ここで、弁護士は、裁判所に対して、勾留延長の必要性はないとして、裁判所に、勾留延長に対する意見書を提出し、勾留延長を阻止するよう働きかけていきます。

赤井耕多
弁護士は、被疑者の身柄の早期解放のため、様々な手段で働きかけていきます。
検察官、裁判所に対する不起訴・釈放の働きかけ
弁護士は、身柄が拘束されている場合でも、そうでない場合でも、被疑者が不起訴になるよう様々な活動をしていくことになります。
それは、上述したような、被害者と示談交渉をすることで、被害者からの宥恕(被害者から許してもらうという意味です)を受けるなど、示談の成立を目指していくなどの行動があげられます。
被害者が複数いる場合には、複数の被害者と交渉し、不起訴に向けて動いていきます。
また、これまでに述べたように、勾留を阻止し、釈放に向けて動いていきます。
その際には、被疑者の家族の協力を得ながら、監視・監督をしてもらうなどの誓約書を作成するなどして、勾留をするための要件が認められないことを示していきます。
起訴後の段階
検察官、裁判所に対する保釈の働きかけ
起訴されてしまった場合、起訴前から勾留されている場合には、引き続き勾留されることになります。その期間は、原則として、2か月間です。
そのため、弁護士としては、起訴後の勾留の継続を防ぐために、裁判所に対して、保釈請求をします。
この保釈請求については、権利保釈と裁量保釈の二つがあります。
権利保釈
権利保釈とは、保釈の請求があった時に、除外事由がない限りは、保釈の請求を認めなければならないというものです。この場合、主に、罪証隠滅のおそれ、逃亡のおそれがないことを示す証拠が必要となる場合が多いといえます。
そのため、弁護士は、身元引受人となってくれる人の協力を得ることや、罪証隠滅・逃亡のおそれがないことを示す事情・証拠を集めていきます。
また、保釈が認められるためには、保釈保証金と呼ばれる金銭も準備する必要があります。保釈保証金はおおよそ150万~300万円程度の金額が必要となります。そのため、弁護士は、保釈保証金に関する資料についても、準備します。
そして、これらの資料を裁判所に提出したうえで、保釈を認めるように、働きかけていきます。
この権利保釈が認められるかは、いかに裁判所に罪証隠滅や逃亡のおそれがないかということをわかってもらえるかが重要になってきます。
そこで、弁護士によって保釈請求をすることが重要になってきます。
保釈請求の書き方や、その主張の内容が、権利保釈が認められるかを左右する重要な要素となるためです。
裁量保釈
権利保釈が認められなかった場合に、弁護士は、裁量保釈を目指します。
裁量保釈とは、権利保釈が認められなかった場合にも、裁判所の判断により、保釈をするのが適当と認める場合には、保釈が認められるというものです。
この裁量保釈が認められるためには、除外事由があっても、なお、保釈を認める必要性があることが前提となります。つまり、弁護士としては、特別な事情があることを示すために、動くことになります。
保釈を認める要素となるもの
・被告人の逃亡や証拠隠滅のおそれの程度
・健康上の不利益
・経済上の不利益
・社会生活上防御の準備上の不利益
刑事裁判に向けてのサポート
本人や親族等との第1回公判期日(裁判)の打ち合わせ
実際に、裁判になった場合に、自分が裁判所で証言をする姿は浮かんだとしても、証言する内容を具体的に考えることは難しいかと思います。
そこで、弁護士は、最初の裁判に向けて、被告人となってしまった依頼者の方や、その親族の方と、どのように裁判所で証言をするのか、なにを言うべきかの打ち合わせをします。
こうした準備をしていくなかで、弁護士は被告人にとって有利な判決が出ることを目指していきます。
検察官請求証拠、弁護人請求証拠の検討
裁判では、検察官と弁護士が、それぞれ証拠を請求していきます。
ここでも、弁護士は、依頼者である被告人の利益にかなうように、証拠を吟味し、今後の戦略をたてていきます。
その際には、弁護士は、検察官の請求する証拠を確認し、その証拠に対して、同意するか不同意するかを判断していきます。
また、証拠を見たうえで、依頼者に対して、なぜこのような証拠があるのかなどの確認をしていき、裁判でどのような主張をするべきかの考えをまとめていきます。
重要な証拠、依頼者にとって不利な証拠である場合には、証拠としてそもそも問題がないかどうかを確認したりもします。
また、弁護士自身も依頼者と密に連絡をとり、アリバイを示す証拠、あるいは、情状証拠として、被告人の量刑に有利になるような証拠を吟味したうえで、場合によっては、被告人に対して、反省文の作成などを依頼したうえで、それを証拠として提出することなども考えていきます。
第1回公判期日の対応
裁判では、まず、人定質問(本人確認の手続)があり、次に、検察官が、起訴状を朗読します。
その後、裁判官からの黙秘権告知があり、起訴状記載の事実について、間違いはないか否かの確認、すなわち罪状認否が行われます。
ここで、弁護士は、依頼者の意向に応じて、認否をします。そして、弁護士は、冒頭陳述を行い、弁護士として、裁判所において、主張したいことを簡潔に述べていきます。
次に、証拠整理が行われます。弁護士は、依頼人の意向に応じて、依頼人にとって利益になるかを基準に、証拠に対して、同意か不同意かを述べていきます。
そして、弁護士は、証人や被告人に対して尋問をすることで、被告人にとって有利な事実を裁判所に出させるようにします。
また、検察官からも、被告人や証人に対し尋問が来ますので、それに対する再尋問をするなどします。
最終的には、弁論というものを行います。これは、裁判の最後に弁護士が行うものであり、裁判までに弁護士として活動してきたもののすべてを出すものです。
これらの活動を通じて、弁護士は依頼者にとって有利な判決、具体的には、執行猶予や無罪判決の獲得を目指します。
この公判期日、つまり、裁判は1回で判決まで終了する場合もあれば、数回の期日を行う場合もあります。
※数回の期日が必要となる場合とは、被疑者・被告人が、犯罪をしたことを認めていない場合や、事件が重大であること、事件の事実関係が複雑である場合などです。

川口晴久
その際には第1回期日内でどのように裁判を進行していくかの協議を裁判官、弁護士、検察官でしていきます。
無罪、執行猶予獲得後のサポート
無罪や執行猶予の判決が出た後にも、弁護士がやるべきことはあります。
まず、弁護士は、家族の方、あるいは身元引受人になってくれた方に連絡をとり、移動手段の確保を支援することなどをします。
一方で、保釈請求が認められていた場合には、上述した保釈のために用意した保釈保証金が全額返還されることになるので、弁護士は、裁判所との間で、保釈保証金の返還に関するやり取りを行うことになります。
また、執行猶予付きの判決が出た場合には、弁護士として、被告人に、執行猶予の意味について説明したり、執行猶予の間にどのようなことに注意するべきかについて言及します。
具体的には、執行猶予は、あくまで、刑の執行が猶予されているだけであり、その間に、また罪を犯してしまった場合には、刑務所に行く可能性があることなどを説明します。
また、執行猶予判決が出た場合であっても、当然、依頼者には、今後の生活があります。そのため、弁護士としては、依頼人の今後の社会復帰の支援や支援団体の紹介などをする場合もあります 。
刑事事件で困ったら弁護士に相談しよう
弁護士は「味方」であり「盾」です。
刑事事件は一度始まると人生に大きな影響を与えるものです。
だからこそ、早めに信頼できる弁護士に相談することが、安心と最良の結果への近道になります。
弁護士に相談すべき理由
・今後の見通しを立て、性格なアドバイスがもらえる
・警察や検察との対応を任せられる
・早期の身柄解放につながる可能性がある
・不起訴や執行猶予など、有利な結果を目指せる
・家族や職場との橋渡しにもなってくれる
西船橋ゴール法律事務所の刑事弁護士は、依頼者(被疑者・被告人)のために最大限努力し、早期の社会復帰に向けたサポートをしています。
刑事事件でお困りの方は一人で抱え込まず、まずはご相談ください。

法政大学法学部卒業
学習院大学法科大学院修了
アトム法律事務所
アトム市川船橋法律事務所
令和5年1月 西船橋ゴール法律事務所開業
所属:千葉県弁護士会