未成年に対する淫行はバレる?発覚したらどうすればいいの?

はじめに
読者の皆さんは、新聞やテレビ、さらにはインターネットのニュース等を通じて、未成年者に対する淫行事件に関する報道をご覧になったことがあるのではないでしょうか。
一般に「淫行」とは、幼い女の子に対する、性的なイタズラ等を連想することが多いのかもしれませんが、刑事責任を問われる「淫行」の範囲がどこからどこまでなのか、その判断や解釈には実際上、難しい面が少なくありません。
もっとも、そうだからといって、いわゆる軽い気持ちで未成年者に対する淫行に及ぶことは厳に慎む必要があることは言うまでもありません。
この記事では、未成年者に対する淫行とはどのような行為をいうのか、規制の趣旨を踏まえて説明するとともに、万一、自身や家族が淫行に関する刑事責任を問われる状況に置かれた場合の対処法を解説していきます。
この記事でわかること
・未成年者に対する淫行としての規制・処罰の範囲
・危機に直面した場合に自身を守る方法
未成年に対する淫行と刑事罰
まず、「淫行」の解釈に入る前に、成年が未成年に対して性的なイタズラ等を行った場合に、どのような規制があり、その内容はどのようなものなのか、について概観しておくことにます。
未成年とは
「未成年」とは、18歳未満の者をいいます。(民法第4条)
このため、性行為の相手方が18歳以上の成年である場合には、未成年との淫行には該当せず、その規制を受けません。
青少年保護育成条例
青少年保護育成条例は、都道府県による未成年者に対する淫行や猥褻な行為を規制する規範です。
この条例に抵触した場合には。刑事罰則が科されることがあります。
罰則の内容は都道府県により異なりますが、法定刑については、概ね「2年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金」であると理解しておけばよいでしょう。
児童福祉法
児童の福祉・権利の保護を目的とする児童福祉法は、児童との淫行を禁止しています。

川口晴久
児童福祉法において「児童」とは18歳未満の者をいいます。
何人も児童に淫行をさせる行為をしてはならず(同法第34条第1項第6号)、これに違反した場合には、「10年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科」に処せられます。(同法第60条第1項)
児童買春法
児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下「児童買春法」といいます)において、児童買春をした場合は、「5年以下の懲役又は300万円以下の罰金」に処せられます。(同法第4条)
ここでいう「児童買春」とは、「対償を供与し、又はその供与を約束して。当該児童に対し、性交等(性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下同じ。)を触り、若しくは児童に自己の性器等を触らせることをいう。以下同じ。)をすること」をいいます。(同法第2条第2項)
また、同法においては、「自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した者(自己の意思に基づいて所持するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。)」は、「1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金」に処せられます(同法第7条第1項)。
加えて、児童ポルノを提供した者は「3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金」に処せられ(同法第7条第2項)、同条第2項の目的で児童ポルノの製造・所持・j運搬・輸入・輸出した者も同様に「3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金」に処せられます(同法第7条第3項)。
【参照ページ】
不同意わいせつ罪・不同意性交等罪(刑法)
2023年の刑法改正により、不同意わいせつ罪、不同意性交等罪が創設されました。
暴行・脅迫、心身の障害、アルコール・薬物の摂取、睡眠等により意識が明瞭でない状態にある等、相手方の同意がない状態、または拒否できない状態において、わいせつな行為を行った場合には、刑法の不同意わいせつ罪に問われます(同法第176条)。
この場合には、「6カ月以上10年以下の拘禁刑」に処せられます。
また、相手方の同意がなく拒否できない状態で性交を行った場合には、刑法の不同意性交等罪に問われます(同法第177条)。
この場合には、「5年以上の有期拘禁刑」に処せられます。
不同意わいせつ罪は、不同意性交等罪と違い、性交等以外のわいせつな行為を行った場合に規制を受ける点が不同意性交罪と異なる点です。

赤井耕多
例えば、相手に強引に抱きつくことは不同意わいせつ罪に該当することになります。
【参照ページ】
「淫行」の範囲
青少年保護育成条例等における「淫行」とは、どのような行為をいうのでしょうか。
複数の要素を総合的考慮して判断
「淫行」という語は、一般的には性的な行為やそれに準ずる行為を指します。

川口晴久
例えば、性行為それ自体のみならず、相手があの身体に接触する等の行為も「みだらな行為」として判断される可能性があります。
その際の判断のポイントは、行為の内容、相手の年齢、当事者間の関係性、行為がどのような場所・時間で行われたか等の諸般の事情を総合的に考慮して判断されることになります。
特に相手が18歳未満の場合は、行為者に対して厳格に判断される傾向にあります。
判例の見解
判例(東京高判平成24年12月19日)は、青少年保護育成条例違反事例において、「相手の年齢および性的行為の内容、関係性からして、社会通念上、淫行と認められる」と解しており、性交にまで至らなかったとしても、強い性的意図を持って身体接触を行った場合には「淫行」に該当し得ることが示されています。
未成年と交際等する場合における陥りやすい誤解
成年による未成年に対する淫行等に対する法規制は、上記のとおりです。
ここで読者が誤解しやすい項目を列挙して説明を加えておきます。
誤解その1「未成年と淫行してもバレない」
特段の根拠なしに未成年と淫行してもバレないと思い込んでいる方もいるかと思います。
しかし、それは誤りであり、非常に危険な考え方です。
行為者自身の想定はともかくとして、淫行は早晩、他人の知るところとなるものと考えておくべきです。
発覚のきっかけとなる代表的なケースは以下です。
発覚するケース
・ホテル街を通行中、警察官より職務質問を受けて発覚
・未成年の親族等による通報により発覚
・風俗店等が何らかの事由により摘発を受けて捜査が行われて発覚
・SNSや出会い系サイトに対するサイバーパトロールにより発覚
「自分は例外であって、見つかるはずがない」などと安易な考えを持ったり、軽率な行動に出ることは何としても避けるべきです。
誤解その2「真剣な交際であれば問題ない」
成年が未成年と交際するとしても、それが不純な動機に基づくものではなく、真剣な交際なのであれば処罰されることはないと考える人もいます。
しかし、その相手方となった未成年の親権者等より警察への通報がなされた場合、成年の行為者に対する逮捕は十分にあり得るのです。
特に、当事者間の過去におけるLINE等で連絡を取り合った場合、その記録等の内容から見て、真剣な交際とはいえない旨の判断がなされた場合には、やはり処罰の対象となることがあります。
真剣な交際であることを主張するのであれば、双方の家族等に隠れて交際を継続するのではなく、理解者を増やすことが重要です。
自分の身の危険を感じた段階で、いわば言い訳のように真剣な交際であることを持ち出したとしても、それは通用しないことを理解しておく必要があります。
誤解その3「未成年の同意があれば問題ない」
交際相手となる未成年の同意を得ていることを理由として、処罰されないと考えている人もいます。
しかし、不同意性交等罪においては、16歳未満の者に対してに対して、わいせつな行為をした者(当該16歳未満の者が13歳以上である場合である場合については、相手方の同意があるとしても、その者が生まれた日より5年以上前に生まれた者に限る)も不同意わいせつ罪に問われます。
また、未成年に対して金員を渡して淫行を行う場合には、当該未成年の同意があることを理由として犯罪の成立が妨げられることはなく、児童買春罪が成立します。
このように未成年に対する性的な行為に関する同意は、基本的に犯罪の成立に影響を与えることはないものと理解しておくことが大切です。
誤解その4「成年であると誤解した場合には処罰されない」
行為者が交際の相手方を成年であると誤解した場合、すなわち相手方が未成年であるにもかかわらず、成年であると誤解して行為に及んだ場合には、処罰されないのでしょうか。
この点、相手方の年齢について錯誤に陥っている場合は、処罰されない可能性はあります。
すなわち、淫行条例違反や児童買春罪において、相手方が18歳未満であるという事実の認識を欠く以上、規範に直面し、反対動機の形成ができるにもかかわらず、これを乗り越えたということができず、故意がないといえるのです。
もっとも、通常人であれば、相手方が18歳未満であることを認識し得るにもかかわらず、自身の不注意でその認識を欠いた場合には、故意が認められる余地があることに注意が必要です。
未成年に対する淫行が発覚した場合
未成年に対する淫行が発覚した場合、どうすればよいのでしょうか?
弁護士を頼るのが最善策
結論から言えば、一刻も早く(逮捕される前に)刑事事件を得意とする弁護士を代理人として起用するべきです。
弁護士は、依頼人より仕事を受任次第、行為者が逃走したり、証拠を隠滅する恐れがない旨を捜査機関に説明し、理解を求めます。
これによって、行為者に対する逮捕・勾留を避けることができる可能性が高まります。
加えて、淫行の相手方本人やその親権者らとの間で示談交渉を行い、これをまとめ上げることにより(示談成立)、事件を不起訴に持ち込むことができるのです。
もちろん、示談の交渉については、弁護士を介することなく、行為者側、すなわち加害者の親族が被害者側と示談交渉を行うこと自体は可能です。
しかし、加害者側が時間的制約がある中で示談交渉を完了させることは、実際上、困難な場合があることも事実です。
示談交渉では、被害者に対する謝罪の意思を示すことはもちろん、被害に対する慰謝料・示談金の算定・支払い、被害者より加害者に対する刑事処分を望まないことを捜査機関向けに宣言してもらうこと、二度と過ちを犯さないこと、加害者と被害者との間には他に債権債務関係がないこと、秘密を保持すること、等を合意したうえで、これらを定めた示談書を作成(記名押印)する必要があるのです。
こうした状況を勘案すると、加害者本人ないしその家族が被害者と示談交渉を行うことは困難であるといえます。

川口晴久
こうした専門的な事項については、法律専門家として、特に刑事事件に精通した弁護士に事件対応を委任することが適切であると言えます。
弁護士を起用することのメリット
示談交渉において、弁護士を起用するメリットは、加害者の代理人として被害者との間で法的見地から適切に交渉を行い、解決に導いてくれることです。
事案によっては、被害者側より行為者側より提示した示談金の金額について、増額を求められるケースもあるでしょう。
この場合、行為者側としては、増額が妥当なのかをはじめ、判断に迷うことが少なくありません。

赤井耕多
弁護士であれば、被害者側の提示額等の妥当性を専門的見地から判断することができます。
また、実際の示談交渉においても依頼者である加害者の事前の承諾なしに被害者と話をまとめてしまうことは全くありません。
むしろ、その都度、「被害者側よりこうした条件が提示されました。当職は、被害者側の主張には合理性があると考えます。行為者側として受け入れることにしてはどうですか」という助言をしてくれます。
このように、被害者側との示談交渉は、弁護士に対応を委任することが良いと言えるのです。
まとめ
この記事では、未成年に対して淫行を行った場合における刑事法の論点について説明してきました。
未成年に対する淫行は、社会的に強い非難を受ける行為です。
それだけに、逮捕・起訴・有罪判決が確定した場合、行為者の社会復帰には大きな壁が立ちはだかることは想像に難くありません。
自身が未成年に対する淫行の嫌疑を受けた場合には、早期に刑事事件における示談交渉の実績が豊富な弁護士に相談しましょう。

平成17年3月 東京都立上野高等学校卒業 平成23年3月 日本大学法学部法律学科卒業 平成26年3月 学習院大学法科大学院修了 平成27年9月 司法試験合格 アトム市川船橋法律事務所 令和5年1月 西船橋ゴール法律事務所開業 所属:千葉県弁護士会