「傷害事件」の示談におけるポイントは?|交渉の流れ・相場・注意点を刑事弁護士が解説
目次
はじめに
傷害事件の加害者になった人にとって、特に気になるのが「自分は無罪になるのか、有罪になるのか」「有罪になるのだとしても、軽い刑罰ですむのか」という問題でしょう。
刑事事件の加害者の処遇において、結論を大きく左右するのが「示談」です。
被害者との示談が成立していれば、早期釈放や不起訴、量刑の軽減といったメリットが期待できます。
傷害事件で逮捕・勾留されたら刑事弁護に詳しい弁護士に依頼して早期釈放、不起訴、量刑軽減を目指しましょう。
この記事では、傷害事件において示談が効果的な理由や、示談の流れ、示談金の相場、示談交渉を依頼するべき弁護士の特徴などを解説します。
傷害事件で示談が効果的な理由
傷害事件の加害者になってしまった場合、まず考えるべきは「被害者との示談」です。
加害者にとって示談は以下のような大きな効果があるためです。
示談すると一般的に民事の和解も成立するから
示談の法的性質は和解契約です。
傷害事件で示談が成立すると、加害者と被害者のあいだに和解が成立し、取り決めた内容について法的拘束力が生じます。
たとえば、和解の内容に「示談成立後は、お互いに一切の責任追求を放棄する」という条項を入れたとします。
その場合、示談内容以外の損害賠償責任を負うことはありません。
つまり、無限定に、何度も、賠償金を要求される心配がなくなるということです。(ただし例外があるので「示談の注意点」で後述します)。
早期釈放や不起訴処分等4つのメリットがあるから
傷害事件で示談すると、大きなメリットが期待できます。
・早期釈放の可能性が高まる
・不起訴処分の可能性が高まる
・求刑や量刑が軽くなる可能性がある
・加害者の社会復帰を促進する
早期釈放の可能性が高まる
示談が成立すると逮捕・勾留された加害者の早期釈放が期待できます。
示談するということは、加害者が自らの罪を認めて反省するという意味も持つため、捜査機関(警察や検察官等)としても、証拠隠滅をおそれて身柄を長期間拘束する意義は乏しくなります。
そのため、加害者が傷害事件で示談すると、早期釈放される可能性が高まる場合があります。
不起訴処分の可能性が高まる
示談が成立すると、被害者の処罰感情が大幅に軽減するため、起訴される前に示談が成立した場合には、不起訴処分の可能性が高まります。
示談書を作成する際は、被害者の気持ちに応えるべく、真摯な謝罪の言葉を書き綴ります。
さらに損害賠償条項が記載されることで、金銭的な救済もなされます。
そのため示談が成立すると、被害者の処罰感情が軽減されるため、重大な傷害事件でない限りは、さらに検察官が起訴して処罰を求める合理的な理由はありません。
求刑や量刑が軽くなる可能性がある
起訴されてから示談が成立した場合も、起訴される前の示談と同じ理由から、求刑や量刑が軽くなる可能性があります。
示談によって被害者の処罰感情が落ち着いているのであれば、それを無視して重い刑罰を求刑する必要はありません。
また、たとえ有罪判決が出るのだとしても、実刑ではなく執行猶予付き判決となる場合がほとんどです。
加害者の社会復帰を促進する
傷害事件の示談では、加害者側が履行すべき条項だけでなく、被害者側が遵守すべき条項もあわせて定められます。
たとえば、「新たな傷害が判明したとしても、加害者に対して責任追求しない」「SNSなどで被害者のことを批判しない」といった条項です。
もし被害者が条項に違反すれば、加害者は被害者に対して損害賠償請求や被害差し止めの仮処分といった法的措置をとることができます。
このように示談書には、被害者の救済だけでなく、加害者の新たな負担を回避する一面もあります。
そのため、加害者の平穏な生活を守り、社会復帰を促進する効果があるのです。
傷害事件の示談の流れと相場を弁護士が解説
傷害事件の示談交渉はどのように進めればよいのでしょうか?
ここからは、示談交渉の流れや示談金の相場について解説します。
傷害事件の示談交渉の流れ
傷害事件の示談交渉は以下の流れで進めるのが一般的です。
1. 被害者に連絡をとり、示談交渉をお願いする
2. 示談の条件を交渉する
3. 示談書を作成する
4. 示談内容を履行する
被害者に連絡をとり、示談交渉をお願いする
示談をする前提として、被害者に連絡をとる必要があります。
とはいえ、加害者と被害者とで直接連絡をとると、二次トラブルが生じかねないこと、証拠隠滅になりかねないなどの理由から、捜査機関は、被害者と直接連絡をとることを勧めないことが多いです。
加害者が被害者の連絡先を知りたい場合は、以下の方法をとります。
1. 加害者から依頼を受けた弁護士が、捜査機関に対して「示談交渉をしたいので被害者と連絡をとりたい」と相談する
2. 捜査機関が、被害者に、弁護士からの示談交渉に応じる意思があるかを確認する
3. 被害者側に示談に応じる意思がある場合、捜査機関が被害者側の連絡先を、弁護士にのみ伝える。
被害者側の連絡先は重要なプライバシー情報です。
したがって、いかに加害者側が示談をしたいと考えていても、被害者としては自分の連絡先を迂闊にもらすことはできません。
そのため、加害者が自ら捜査機関に依頼するのではなく、弁護士に代理してもらい、連絡先も弁護士に対してだけ通知する(加害者本人には伝えない)のが実状です。
示談の条件を交渉する
被害者側と連絡がとれたら、示談の条件をお互いに提示してすり合わせを行います。
このような条件交渉は、身柄を拘束された加害者が独断で進めることはほとんど不可能です。
また、示談を少しでも有利に進めるためには、和解契約や損害賠償等の専門知識だけでなく、被害者心理をふまえた対人交渉の経験が欠かせません。
やはり示談交渉は、たとえ加害者が身柄拘束されていないとしても、専門家である弁護士に依頼するのが得策です。
示談書を作成する
示談の条件のすり合わせが完了したら、その内容を示談書に書き起こします。
当事者双方が署名押印した示談書は、正式な契約書として有効に成立します。
示談内容を履行する
示談書を作成し、お互いに同意すると「加害者は被害者に一定の賠償金を支払う」「被害者は今後新たな損害が発生したとしても賠償請求しない」といった示談内容の効力が発生します。
したがって、相手方が示談内容に反する態度をとった場合、一定の法的措置をとることができます。
たとえば、示談書において「被害者は、加害者の犯罪についてネット上で書き込むことを禁じる」と定めていたにもかかわらず、示談成立後にSNSで加害者の実名をあげて批判するなど示談内容に反する行動をとったとします。
その場合は、SNSの投稿の削除を求める仮処分や、損害賠償請求などの法的救済措置をとることになります。
もっとも、このような法的手続きを滞りなく進めるには、SNSのアカウント情報の開示や相手方の財産の特定に関する高度な専門知識が不可欠です。
傷害事件の示談金に決まった相場はない
傷害事件における示談書では、被害者救済の目的で、加害者から被害者に示談金を払うよう定めることがあります。
示談金とは、事件の加害者が被害者に対して支払う慰謝料や治療費などの賠償金の総称です。
裁判手続きを通さずに加害者側と被害者側が話し合いで決める点に特徴があります。
示談金の金額は処罰感情などで大きく変わる
傷害事件の示談金の相場は、数万円から100万円以上と幅があり、明確な基準もありません。
つまり、傷害事件の示談金に「相場はない」といってよいでしょう。
これは示談の内容が、暴行や怪我の程度、相手方の処罰感情、加害者の経済状況などにより大きく変化するからです。
たとえば、3ヶ月で治る見込みの軽い骨折と、1年以上の治療が必要な複雑骨折とでは、加害者が被害者にふるった暴行の程度は相当違います。
当然、被害者が受ける経済的負担や加害者への処罰感情も全く異なるでしょう。また、被害者の処罰感情が小さければ示談金の金額も小さくなり、その反対もしかりです。
加害者の支払い能力が低いと示談が成立しない場合も
加害者側に金銭的な余裕が全く無ければ、いくら高額な示談金を定めてもほとんど無意味です。
示談を無事に成立させるためには、「お気持ちはわかりますが、そちら様が希望する示談金は高すぎるので、あまり現実的ではありません」などと、加害者側から被害者側に譲歩を求めることも必要でしょう。
このように、示談金の金額はさまざまな要素を考慮して決まるため、加害者が自分だけで交渉・判断してしまうと、多額の示談金を支払うことになりかねません。
示談のデメリット・注意点
示談は加害者にとってメリットばかりではありません。ここでは、刑事事件の示談を念頭に、デメリットと注意点を説明します。
示談のデメリットは「向き・不向き」があること
示談はお互いに譲歩することが必要です。
したがって、傷害の状態がひどい場合のように、被害者側の気持ちとして示談に応じたくないケースでは、示談に応じてくれないことがあります。
その場合示談が成立しないため、加害者は早期釈放や不起訴処分、量刑の軽減といったメリットは一切享受できません。
示談が期待できないにもかかわらず、何でもかんでも示談しようと固執すると、かえって被害者の処罰感情が増幅してしまい、求刑や量刑が厳しくなるおそれもあります。
このように、示談には「向いているケース・向いていないケース」があることから、弁護士などの専門家による見極めが重要です。
示談で注意したい5つのポイント
示談をする際、以下の5つのポイントに注意しましょう。
・示談は修正できない
・撤回されるリスクがある
・公正証書にする必要がある
・高額な示談金を受け入れてしまうリスクがある
・後遺症が発生した場合、損害賠償を追加請求される可能性がある
示談は修正できない
示談の当事者は、示談内容に法的に拘束されます。
したがって、示談書の内容をあとから修正することは認められません。
自分に不利な間違いをおかさないためにも、示談に詳しい弁護士に代理してもらうのが賢明です。
撤回されるリスクがある
先に「示談は修正できない」と説明しましたが、例外があります。
たとえば、加害者側が詐欺や強迫によって自分に有利な示談にしたような場合、法的には取り消し可能な示談となります。
詐欺や強迫を理由に被害者側が示談を取り消せば、修正どころか、示談全体が初めから無かったことになるのです。
これは示談の本質が和解契約である以上、避けられないリスクだといえます。
法的に効果が認められない内容がある契約は、当事者の意思で否定される可能性があるわけです。
このようなリスクは、いくら当事者が契約の解説書を読んでも回避することは難しいでしょう。
契約の専門家たる弁護士に依頼することが最善の対策となります。
公正証書にする必要がある
示談書はお互いの態度を法的に拘束します。
だからといって、相手が示談内容に反した場合に無条件で救済されるわけではありません。
たとえば、示談に違反したことを理由に相手方の財産を差し押さえるためには、民事裁判で判決(債務名義)をもらうことが必要です。
当然、弁護士報酬などの余計なコストがかかるので、泣き寝入りとなるケースもあります。
示談の内容が誠実に履行されなかった場合に備えるには、示談書を公正証書にしておくのが最善です。
示談書を公正証書にしておけば、「強制執行認諾条項」を書き加えることができるので、判決がなくても相手方の財産を差し押さえることができます。
高額な示談金を受け入れてしまうリスクがある
上述したように、示談金に明確な相場はありません。
被害の状況や加害者被害者双方の態度などさまざま要素を考慮して示談金額が決まります。
また、加害者としては一刻も早く示談したい気持ちがあるため、被害者が提示した高額な示談金をやむをえず受け入れてしまうこともあるでしょう。
後遺症が発生した場合、損害賠償を追加請求される可能性がある
示談書の法的拘束力は、当事者の権利放棄にも及びます。
したがって、被害者が「一定の金額以上の損害賠償は今後一切請求しない」という条項に同意すると、原則として新たに発生した損害について損害賠償請求することはできません。
ただし、最高裁判所は「示談によって被害者が放棄した損害賠償請求権は、示談当時予想していた損害についてのもののみと解すべき」と判断しています(最判昭和43年3月15日)。
そのため、示談当時に予測できなかった新たな後遺症に対しては、被害者による損害賠償の追加請求を認める余地があるのです。
このような例外的事態を充分ふまえて示談書を作成することは、専門家以外には困難です。
示談を有利に進める「刑事弁護士選び」のポイント4つ
ここまで説明したように、刑事事件の示談にはメリットだけでなくデメリットや注意点があります。
メリットを充分に享受し、かつデメリットや注意点を避けるためには、傷害事件の示談の優れた知見を持つ経験豊富な弁護士が必要です。
そこで以下では、示談交渉の代理人として選びたい刑事弁護士のポイントを4つ紹介します。
・刑事事件の示談の実績が豊富であること
・示談金の適切な金額を見通せること
・被害者の心情をくんだ交渉ができること
・地元の弁護士であること
刑事事件の示談の実績が豊富であること
傷害事件の加害者が示談を成功させたいとき、まず検討すべきは「刑事事件の示談の実績が豊富な弁護士を選ぶこと」です。
なぜなら、同じ示談でも民事事件と刑事事件とではポイントが異なるからです。
刑事事件の実績を公式ホームページで公開している法律事務所や弁護士であれば、刑事事件の経験が豊富だと推定できます。
もし傷害事件の加害者になってしまったときは、法律事務所のホームページをチェックし、刑事事件の示談の実績を確認しましょう。
示談金の適切な金額を見通せること
示談金の金額を適切に判断できない弁護士が代理すると、被害者の言い値で示談を成立させかねません。
上述したとおり、刑事事件の示談金に明確な相場はありません。
だからこそ、弁護士の示談交渉の経験が問われるのだといえます。
刑事事件の示談の実績や刑事弁護のキャリアをよくチェックして、示談金の適切な金額を見通せる弁護士かどうかを確認しましょう。
被害者の心情をくんだ交渉ができること
示談はお互いの譲歩によって成立する和解契約です。
加害者側の事情ばかりを優先してしまうと示談交渉が破綻するおそれもあり、そうなれば早期釈放や不起訴処分といったメリットを受けられなくなります。
被害者の感情や事情も考慮しつつ、依頼者である加害者の意向を叶えてくれる交渉ができるか。
この視点で弁護士選びをするのがポイントです。
地元の弁護士であること
刑事事件で身柄を拘束された場合、一刻も早く弁護士と接見して安心したいのが加害者側の心情でしょう。
しかし、弁護士は多忙を極める仕事ですから、遠方の刑事事件に迅速に駆けつけることは難しいのが現実です。
「刑事事件の権威だそうだから、ぜひこの弁護士先生に依頼したい!」などと、曖昧な基準で遠方の弁護士を選んでしまうと、肝心なときに来てくれないかもしれません。
身柄拘束されている不安をすみやかに解消し、トラブルを解決するためにも、東京都で起きた事件には東京の、大阪で起きた事件には大阪の……というように、地元の弁護士を選ぶことが肝心です。
まとめ:千葉県内の傷害事件の示談なら、西船橋ゴール法律事務所へ
傷害事件の示談交渉は、できるだけ早く着手することが大切です。
特に逮捕・勾留されている場合は、不起訴に持ち込むためにも、弁護士を代理人に立てて示談交渉する必要があります。
「家族が傷害罪で逮捕されてしまった……被害者と示談して早く釈放されたい」
そんなときは、刑事事件に強く示談経験が豊富な西船橋ゴール法律事務所へすぐにご相談ください。
「早期の示談締結で不起訴処分を獲得」など実績ある弁護士が、示談成立に向けて総力をあげて対応いたします。
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